長征二号丁ロケット、地球観測衛星「遥感衛星二十四号」の打ち上げに成功

2014年11月21日 13:56

 中華人民共和国は11月20日、地球観測衛星「遥感衛星二十四号」を搭載した長征二号丁ロケットの打ち上げに成功した。中国は14日にも「遥感衛星二十三号」を打ち上げたばかりで、わずか6日の間隔で打ち上げられたことになる。また遥感シリーズは今年だけでも7機が打ち上げられている。

 ロケットは中国標準時2014年11月20日15時12分(日本時間2014年11月20日16時12分)、酒泉衛星発射センターの第2発射台から離昇した。その後、中国政府や中国国家航天局は「打ち上げは成功」と発表した。

 また米国の宇宙監視ネットワークは、この時間帯に新たな物体が1つ(2014-072A)、軌道上に追加されたことを探知しており、打ち上げが成功したことが裏付けられている。2014-072Aは近地点高度約630km、遠地点高度約650km、傾斜角約97.9度の、太陽同期軌道を周回している。

 中国政府の発表によれば、遥感衛星二十四号は地球観測(リモート・センシング)衛星で、科学試験や災害対策、農作物の管理を目的としているとされる。だが、軍事目的でも使用されていることは半ば公然の秘密となっている。

 遥感と名のつく衛星には、電子光学センサーを搭載するものと、合成開口レーダー(SAR)を搭載するもの、そして3機同時に打ち上げられて編隊で飛行し、艦艇から出る電波を傍受するものの、大きく3種類があるとされている。今回軌道に乗った衛星は1機なので、まず電波傍受衛星の線は消える。

 またSAR衛星はこれまで高度500km辺りの軌道に投入されていることから、可能性は低い。そして、過去に酒泉衛星発射センターから、長征二号丁を使って打ち上げられ、かつこの軌道に乗った遥感衛星は、二号(2007年)、四号(2008年)、七号(2009年)、十一号(2010年)しかない。したがって、遥感衛星二十四号はこのシリーズに属する衛星であると考えられる。

 このシリーズは電子光学センサー(デジタルカメラ)を搭載し、軌道上から地表を撮影することを目的としている。ただ、十一号の打ち上げからは4年が経っていることから、性能を向上させた後継機である可能性もあろう。

 ちなみに、電子光学センサー搭載型の遥感衛星は他に、高度500km付近と、1,200km付近にも投入されており、前者は狭い範囲を高い分解能で、また後者は低い分解能ながら広い範囲を観測することを目的としていると思われる。今回打ち上げられた高度650kmの軌道に投入されたシリーズを含めて、3種類の軌道に衛星を配備することで、地表の細かい様子から広い範囲の様子まで、まんべんなく撮影する意図があると考えられる。

 高度500kmの軌道にはこれまで、遥感衛星五号(2008年打ち上げ)、遥感衛星十二号(2011年)、遥感衛星二十一号(2014年)が打ち上げられている。なお、2012年に打ち上げられた遥感衛星十四号も、五号らと同じ軌道を飛んでいるが、公開された想像図では外見が異なっており、より先進的な機器を積んだ、試験機のような位置付けであると思われる。1,200kmの軌道には八号(2009年)、十五号(2012年)、十九号(2013年)、そして二十二号(2014年)が打ち上げられている。

 長征二号ロケットは、もともと返回式衛星(FSW)と呼ばれるフィルム回収式の偵察衛星を打ち上げる手段として、当時開発が進められていた大陸間弾道ミサイル「東風5」を基に造られた。

 最初に開発された機体である長征二号は2段式のロケットで、地球低軌道に2tの打ち上げ能力を持っていた。1974年11月5日に1号機の打ち上げを試みるも離昇20秒後に爆発、失敗に終わる。原因はジャイロからの信号を伝達するケーブルに問題があったためと記録されている。

 その後、改修を施した長征二号甲が登場した。長征二号甲は基本的に長征二号と同じ機体だが、長征二号の失敗の原因となったケーブル部に手が加えられている。1975年11月26日に1号機が打ち上げ成功し、FSWを軌道に乗せた。その後1978年1月26日までに全3機が打ち上げられた後、引退した。

 またその後、打ち上げ能力を高めた長征二号丙が登場した。見た目は長征二号、長征二号甲と似ているが、改良により、地球低軌道への打ち上げ能力が2.4tにまで向上している。FSWなどの他、イリジウム衛星など他国の商業衛星を打ち上げるロケットとしても使われ、第3段として固体ロケットを装着した構成や、また近年は打ち上げ能力を4tまで高めた改良型も登場した。1982年9月9日に初飛行し、現在も活動している。

 そして、1980年代中期に開発されたFSWの改良型FSW-2を打ち上げるために、長征二号丁が開発された。当初は長征二号丙の開発を担当した中国運載火箭技術研究院(CALT)が長征二号丙の改良型を提案するもコスト高により却下、代わりに上海航天技術研究院(SAST)が提案した案が採用され、これが長征二号丁となった。1992年8月9日に初飛行し、現役である。ただし、当初開発された長征二号丁は1992年と1994年、1996年の3回だけ打ち上げられて運用を終え、2003年からは尾部にフィンが追加されるなどした、改良型の長征二号丁が運用に就いている。

 長征二号シリーズはこれまでに81機が打ち上げられ、77機が成功し、成功率は95%となっている。また長征二号丁に限っては今回で22機目となり、すべて成功している。

■我国成功发射遥感卫星二十四号_图片_新闻_中国政府网
http://www.gov.cn/xinwen/2014-11/20/content_2781467.htm

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