霊長類は食糧難から道具を使うようになったわけではない?

2014年11月20日 12:08

あるAnonymous Coward 曰く、 「必要は発明の母」と言われるが、ケンブリッジ大学のKathelijne Koops博士によると、道具を使う上で重要な役割を果たすのは環境的な機会であり、必要性ではなく環境こそが文化の発展を形成するのだという(ケンブリッジ大学)。

 Biology Lettersに掲載された記事によると、霊長類において道具使用を決定づけるのは食糧難ではなく、カロリーに富んでいるが手に入れづらい食糧資源が存在することだという。道具を使用して獲得するナッツや蜂蜜といった食糧は生息環境で最も栄養に富んでいるものであり、道具使用の労が報われるということだ。このような食糧資源の存在や道具に必要な材料に遭遇する機会などが道具使用に大いに影響しているという。

 霊長類の同じ種であっても、道具使用の有無やその差といった行動のバリエーションが存在する。このことは生態学的な違いや遺伝的違いだけで説明できないため、「野生の霊長類にも文化は存在する」と論じられてきた。しかし、このような除外法からくる理由付けは誤っている恐れがあるとのこと。物質的な環境や機会といったファクターこそが文化の発生や発展を左右するものであり、文化が発生した環境の物質的側面を見落としてはならないという。

 また、人類は並外れた物質文化および技術を発展させてきたわけだが、霊長類と人間の類似性を考えると、人類の文化発展における物質的要因や環境的要因の重要性が改めて浮き彫りになるとのことだ。

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