アルコニックスの代表取締役社長正木英逸氏が現況と今後の取組について語る
2014年11月18日 11:32
■今期は過去最高の経常利益49億5000万円を見込む
上場以来の過去最高の経常利益49億5000万円を見込むアルコニックス<3036>(東1)の代表取締役社長正木英逸氏に現況、今後の取組等について伺った。
――これまでの商社は、利ザヤがどれだけ稼げるかの世界でした。このマージン商売ではこの先は無いのだということで、非鉄金属の会社さんはどこも苦労されていますよね。ところが、御社は、商品市場の動向に左右されることなく、安定的な収益が上げられるように、事業構造の改革を実施しています。その結果、今期は過去最高の経常利益を達成する見込みですね。
【正木社長】 その通りです。今期は経常利益ベースで過去最高であった12年3月を上回る見込みです。当時はレアメタル・レアアースが収益に大きく貢献しました。いまは、そのウェイトがだいぶ下がりましてね、上期で占める割合がレアアースは7%くらいまでしかありません。取扱商品としては、大事な金属ですけれども、当時と比較するとウェイトが下がりました。また、レアメタル・レアアースは価格変動が速すぎます。流通量が少ないものですから、需要動向によって価格が過敏に反応します。だからボラティリティが高いといえます。多分投資家の皆様から見られて、アルコニックスというのはそのような商品をたくさん扱っているから、業績のボラティリティが高い、変動が激しいという風に見られていたようですけれども、我々はそれを改めてきています。
――レアアースの影響で、12年は過去最高益となりました。しかし、その後もおっしゃられたように、レアメタル・レアアースに依存しない体質に変化していますね。
【正木社長】 レアメタル・レアアースの落ち込みの分を何で埋めたかというと一番大きいのはM&Aです。09年から現在に至るまで製造業を3件M&Aしています。一つは大川電機製作所で、アルミやチタンなど軽合金の切削を行います。次は米国のユニバーティカルというメッキ材料の会社です。もう一つが大羽精研、これは半導体装置向け精密部品の研削加工を行っています。いずれも、好調です。中でも特に大羽は超多忙で、作りたいのも作れない状況です。この3つの製造業で、上期の業績で売上は全体の10%ですが、経常利益でいうとケィ・マック他2社の持分法適用会社を含めて全体の37%の利益を占めています。相対的にいうとレアメタルとかレアアースは、相場による利益が低くなっています。しかし、製造業の業績は安定していますから、そういう意味で、相場の変動に強い会社になっています。
――そういうとM&Aが大切な戦略になってきますね。
【正木社長】 中期的な戦略の中では、M&Aが非常に大切になってきています。何故かというと、既存の商売がなかなか伸びない。伸びないと新しい分野に進出しないことには利益は伸びません。実際限られたパイの中で、商社同士が取り合いをしても、所詮は大したことはありません。無駄なエネルギーを使うということです。それであったら、新しい分野に出ていくことを心がけています。我々の方針としては、M&Aの対象企業として、川上(製造業、リサイクル)、川中(商社)、川下(問屋とか加工業)を問わない、非鉄金属だけにこだわらない、化学品とか鉄でもよいということです。それから、国内、国外を問いません。海外の方が面白い企業があるかもしれません。アメリカ、欧米、シンガポールとか透明性の高いところを狙ってM&Aしていきます。それと製造業が流通業より利益率が高い場合が多いので、流通業は高くても粗利7%くらいですが、製造業は最低20%くらいの事業が多いといえます。それで、我々も出来るだけ製造業に近くなりたいと思っています。今年の11月までに11件のM&Aを行っていますが、2件はアルコニックスの中に取り込んでいます。これまでは、出合い頭にM&Aしてきた感じですが、これを点から面にして、有機的な繋がりのあるM&Aを行い、最終的には、非鉄金属の総合商社を目指しています。私のいう総合商社というのは、流通業もやっているし、製造業もやっているし、更に有機的な繋がりを持っていてグループを形成して動いている総合的な会社というイメージです。
――中期経営計画の数値的な目標は如何ですか。
【正木社長】 昨年の経常利益は36億円でした。今年の計画が42億円、来年が47億円、その次の年は52億円を見込んでいました。ところが、どうも現状では今期の通期で49億5000万円になると見込んでいます。少しペースが速すぎるので、来期も最高益更新するためには、M&Aするしかないと思っています。
――投資の計画はどのようになるのですか。
【正木社長】 向こう3年間で150億円の事業投資を計画しています。対象はM&A、事業投資、設備投資の3つです。経常利益率で10%以上を目指します。つまり、150億円の10%ですので、15億円の経常利益を計画しています。まず、大川電機で15億円の新規投資をします。航空機関係の設備を拡大します。大羽精研は現在フル稼働状態ですので、こちらにも数億円投資することになるでしょう。また、ユニバーティカルは中国で、8億円かけて敷地内に新工場を増設中です。この様に、設備投資に使う金額は150億円のうちの30億円を投資する予定ですが、償却もあり真水は7億円程度です。残りはM&Aにまわします。今年は、これ以上の業績は見込めませんが、来期からは、M&Aまたは設備投資により、連結業績に加わってくるようにして、右肩上がりになってくるようにします。とりあえず経常利益50億円が目標だったのですが、5年後は100億円を目指します。また、この間に一つのグループ企業を形成したいという思いもあります。
――川下のところで、例えば問屋ということでしたが、御社が取り扱っている製品を使って、何らかの製品にする製造分野というのも含まれると考えてもよろしいのでしょうか。
【正木社長】 既に、中国の広州で、日系企業の金属加工を行っている会社ですけれども、恒基創富という会社に35%の株式を出資してビジネスを作っています。アルミ等の部隊は日本の国内で伝統的なビジネスを展開してきていましたが、日本での事業展開は難しくなってきました。そこで、海外で事業展開できるように日系企業を中国に引っ張ってきて、現地でビジネスが出来るように、会社に出資しました。それから、もう一つは、上海龍陽精密複合銅管の株式を25%取得しています。大体連結決算益が1億5000万円になります。この株式を12億円で買いました。連結決算益が1億5000万円ですから、8年で元を取る形です。上海龍陽という会社は、世界最大の精密銅管メーカーの金龍という会社の子会社です。この様な事業もやっています。この他に、スクラップヤードにも力を入れています。昨年、大阪の枚方で、アルミのスクラップヤードを買いました。業績は好調です。年間5000万円くらいの利益が上がるでしょう。それから第2弾で、九州の稲田商会の銅のスクラップヤードを事業譲受しました。機会があれば、東京、名古屋とかでも展開したいと思っています。スクラップは日本国内では、一定の需要があります。将来は輸出を狙っています。九州も大阪も立地条件が良いといえます。この様なリサイクルの事業も脚光を浴びてくると思っています。レアアースについては、コストの安いベトナムでリサイクルの事業化を進めています。
――アルミでも銅でも素材のところを扱う製造の分野も含めて、最終的にどこかのメーカーが使うところまで、商圏に取り込むということですね。
【正木社長】 英語でいえばトータルオルガナイザーということです。自分で主導して商売を創りだすようにします。
――昔から商社というのは、右から左に物を渡す口銭ビジネスといわれてきました。それが投資家の皆さんの頭にはこびりついています。今の商社ビジネスというのは、そのようなビジネスも残っているかもしれませんが、基本的にはそれでは儲かりませんということで、川上から川下まで取り込んでビジネスを創出するようになってきています。その点をまだ投資家の皆さんの多くが理解していないので、商社のセクターは万年割安株として放置されているのだと思います。
【正木社長】 東証1部の株価の平均はPER17倍、PBR1.4倍です。ところが、当社の株価はPER6.5倍、PBR1.0倍と平均を大きく下回っています。大手商社のところの株価欄を見ると、ほぼ当社と同じですので、当社は商社としては規模は小さいですが、株価だけは大手商社並みというところです(笑い)。
――商社のセクターの株は、全体が万年割安株といわれているように、どうしても高く買われません。イメージとして口銭商売、資源価格が下がると株価も下がるというイメージが投資家の間で定着しています。しかし、御社の場合はビジネスを創出し、製造業の会社も取り込み、昔の商社とは異なるビジネスの展開をしています。その点を、投資家の皆さんに理解していただければ株価の水準も違ったものになると思います。
【正木社長】 そうですね。この様なインタビューを通じて少しでも当社の現状をご理解いただければと思っています。
――最後になりますが、これまで11社のM&Aを行い、30社に事業投資を行っています。その全てが成功しています。M&Aを行う基準がありましたら教えてください。
【正木社長】 これまで、M&Aを行って全てうまくいっています。その理由として挙げるなら、一つは目利きですね。我々は、M&Aをするときは徹底的に調べます。ポイントとしては、現状の利益に瑕疵がないかどうかというのと持続性があるか、将来にわたって成長できるかどうかということです。それと業績が安定しているかも大切で、今期は良くても来期は赤字だというのであればターゲットにしません。更に、技術力があり、社員のやる気があるかどうかもポイントにしています。M&Aの実施後は、それまでの経営者に経営をゆだねます。できる限り長くやってもらいます。給料は、それまでの給料にインセンティブを付けます。本社からは、最低一人は派遣します。我々は上場企業ですから、上場企業の基準に合った処理をすることが求められますので管理部門の人を派遣します。それ以外はあまり口を出しません。コントロールするのではなく、自主性を尊重します。基本的には、勝機があれば思い切って投資もします。これまで、M&Aしてから従業員は増えています。
――本日は、長い時間お話しいただき誠にありがとうございました。 (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)