上場企業好益の一方で消費者動向・景気ウォッチャーは悪化 消費者との乖離激しく
2014年11月16日 15:24
内閣府が10月の消費動向調査と景気ウォッチャー調査を発表した。消費動向調査は、「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」の4項目から消費者心理を示す調査で、3ヶ月連続の低下となった。3ヶ月連続の下方修正は実に5年振りだ。
景気ウォッチャー調査は、街角での景気実感に対する聞き取り調査で、小売関係者やタクシー運転手など、消費の動きを肌で感じている人を中心に実施されている。こちらは8月から9月は横ばいだったが、10月調査では悪化し、今年4月の消費税8%引き上げ時に近い水準にまで落ち込んだ。
一方で、東証一部上場1250企業の9月中間決算(4~9月)が発表され、経常利益合計が前年同期比9.58%増の17.3兆円になるとの見通しが出た。これはリーマンショック前の2007年に並ぶ高水準だ。自動車、電気機器などの輸出関連企業が円安の影響を受け好決算になったことが大きい。その裏で、円安で原材料価格が上昇した製紙企業や、原油価格下落の影響を受けた石油関連企業などは大きく落ち込んだ。明暗はくっきりと出たものの、トヨタ自動車〈7203〉が最高益を更新するなど、輸出関連企業の爆発的な好調が全体を押し上げた形だ。
これらのデータを並べてみると、一部大企業が好決算を出している一方で、一般消費者の間では消費税8%引き上げ以降、景気改善が感じられない状態がずるずると続いていることが伺える。景気ウォッチャー調査内の「2~3ヶ月後の景気先行き判断」も下落しており、消費者の間では、現状だけでなく先行きにも不安感の方が強い。その先行き不安の最も大きな要因は、消費税10%への再増税であることは間違いないだろう。
現安倍政権の金融政策では、一部大企業には恩恵があっても、一般消費者は苦しみを増すだけだということが鮮明に見えた調査・中間決算だと言えるだろう。少なくとも、消費者意識との乖離は非常に大きい。日本国内の全給与所得者の内、年収300万円以下は41%、1000万円以上は4%というデータもある。誰のための景気回復・金融政策なのか、国民がもっと声を上げることはもちろん、政権は消費者の声にもっと耳を傾けるべきではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)