【コラム 山口利昭】第三者委員会に「三度目の正直」はあるのか?-JBR事例

2014年11月13日 11:27

【11月12日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 四半期決算開示真っ最中で、適時開示を巡回するのもたいへんですが、このたびは「迷える会計士さん」から教えていただいたネタです(どうもありがとうございます)。当ブログでも過去に二度コメントさせていただいたJBR(ジャパン・ベスト・レスキュー)さんですが、またまた内部告発があり、今度は代表取締役の不正に関する疑義が発生、会計監査人とも相談のうえ、第三者委員会設置を決めたそうです(同社HPのリリースはこちら(http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1187731)です)。今度は大阪の法律事務所が利害関係のない第三者として登場されています。

 本件は、あまりマスコミでも取り上げられていませんが、内部統制報告制度の在り方について考えさせられる事件です(たとえば拙ブログの過去のエントリー(http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20140630_7)などをご参照ください)。今年に入って、2回も第三者委員会が設置されましたが、またまた内部告発で経営者関与の不正疑惑が持ち上がったとのこと。経営権争いや経営者と監査役会との対立によって2度の第三者委員会が設置された例はありますが、企業不祥事発生をきっかけに第三者委員会が3回も設置されたのは初めてではないでしょうか?(フタバ産業さんの例では、たしか1回目は社内調査委員会だったように記憶しています)。

 今回の内部告発と、以前の内部告発が同一の方からのものかどうかはわかりません。しかし、ここまで続くとなりますと、やはり「以前の第三者委員会が『他にも不正はないか』といった視点から調査をしたのだろうか?」との疑念が湧きます。

 もちろん、会社側から調査対象として依頼を受けた事項のみ調査をしていたから、ということだとは思うのですが、しかし不正の原因を究明したり、有効な再発防止策を検討するにあたっては、同種事案が他部署でも発生していないかどうか、最近はフォレンジック等を活用して調査をするケースが多いと思います。

 一昨日の椿本興業さんの例でも述べましたが、不正調査の時点で、もっと他にも不正がなかったかどうか、詳細に調査をしていれば、不正の兆候を見つけることができたのではなかろうか、とも考えられます。第三者委員会の設置費用というのも、結構バカにならないと思うので、度重なる第三者委員会の設置は、会社自身の信用問題だけでなく、企業資産の損失にもつながるかもしれません。

 ハーバードビジネススクールの経営学の著名教授であるクリステンセン氏の「クリステンセン経営論」の中で、同氏は「限界費用の罠にはまるな」と警鐘を鳴らしています。自身の経験に基づく記述ですが、ルールを守るということに例外を設けて「今回だけは・・」という気持ちでルールを犯してしまうと、その「今回だけは」を許した自分が、容易に例外を許すようになり、今後の人生をダメにしてしまうとして、例外を許さないことの大切さを説いておられます(359頁以下)。

 私が過去に内部告発の支援をした方々も、同じような考え方でした。たとえ自分が告発をしたとしても、お金になるわけでもない、しかし、ここで会社の不正を糺しておかなければ、「あのとき、会社の不正を許してしまった」という気持ちのまま生きる自分が、これからの自分の人生で汚点になってしまう、といった気持です。内部告発は、こういった社員や元社員の人生観の中で誘発される、ということもあります。

 今回のJBRさんの事例が、そういった内部告発者の心情によるものかどうかはわかりません。ただ、ここまで不正追及の告発が続くということは、やはり根の深い事情があるのではないか、と推測してしまうところです。【了】

 山口利昭(やまぐちとしあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。

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