財務省の強烈な巻き返しも消費税再増税はまだ五分五分とみる

2014年11月4日 08:01


*08:02JST 財務省の強烈な巻き返しも消費税再増税はまだ五分五分とみる
先週末の金曜日、日銀はサプライズの追加緩和策を打ち出した。また同日午後、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株式の保有比率を大きく引き上げる方針を打ち出した。この二つの衝撃により強烈な円安・株高の波動が発生し、ドル円は一時114円台、日経平均株価もCME日経平均先物では17000円を上回った。
 この二つの材料は、表向きはそれぞれ全く関係なく決定されたもので、同日となったのは「たまたま」とされているが、それを額面通り受け止めるお人好しの市場関係者はいないだろう。どちらも財務省のシナリオ・演出による、消費税増税決定に向けての強力な援護射撃であることは明らかだ。まさに予算権限を握る省庁の中の省庁である財務省の権力・影響力の大きさと、消費増税にかける執念をまざまざとみせつけられた格好となった。
 しかし、財務省の狙いは円安・株高により景気が良い雰囲気を作り出し消費増税の決定を行いやすくするというものだが、事はそう簡単にはいかないだろう。
 判断材料となる経済指標は足元では鉱工業生産が若干の改善を示した他ははっきり良くない。安部首相も消費税増税後の経済状況は「想定内で最悪の結果」と明言している。一気に3%も消費税を引き上げた影響は非常に大きかったと言わざるをえない。
 この状況で株価だけ上がっても「時すでに遅し」の感は否めない。今となっては政府・日銀は消費税増税の影響を軽く見積もりすぎだったと言うことができる。日銀の追加緩和も資産効果による緩和を狙って消費税増税前後に実行すべきだった。
 安部首相も消費税再増税の判断は本音ではやりたくないところだろう。もしここで消費税増税の決定をしてさらに日本経済の景気の腰が大きく折れるようだと、アベノミクスは失敗だったという烙印を押され、安部内閣の命脈もつきる。財務省や自民党内の予算権限に関与する主流派は今回のタイミングを絶対に逃してはならじと消費税増税を何が何でも決めようという腹づもりであるが、安部首相の言動や世論調査の約7割が消費税再増税に反対していることを考えると、決定か延期かの行方はまだ五分五分とみる。《YU》

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