相次ぐマタハラ訴訟 最高裁で初判決も
2014年11月1日 22:09
「セクハラ」「パワハラ」に続く3大ハラスメントの1つ、「マタハラ」に大きなターニングポイントが訪れた。広島市の理学療法士が、妊娠をきっかけに降格されたのは違法として勤務先の病院を訴えていた裁判で、最高裁判所が降格は男女雇用機会均等法に違反するとの判決を下した。いわゆるマタニティ・ハラスメント(マタハラ)について裁判所が判断を下すのは初めてのことだ。
訴えを起こしていたのは広島市の病院に勤務する理学療法士の女性。10年以上の勤務経験を経て、副主任のポストにつき、第1子の育児と仕事を両立させてきた。しかし第2子妊娠時に、当時配属されていた訪問リハビリチームから軽い業務への配属替えを希望したところ、病院内のチームへ移動となったものの、同時に副主任の任を解かれた。
病院側は降格人事について「裁量権の範囲内」と主張していたが、最高裁はこれをしりぞけ、1審2審の判決を破棄し、高等裁判所への差し戻しの判決を出した。
時期を同じくして、たかの友梨ビューティクリニックを相手取り、エステティシャンがマタハラ被害の損害賠償と未払い残業代の支払いを求める訴訟も起こっている。訴えを起こした社員は、勤めてから有給は1度も取得せず、月80時間の労働をこなす生活を10年近くに渡り続けてきた。
そうした中で妊娠が判明したが、妊娠中も9時~22時半まで働き、休憩時間は食事を取る15分程度しか与えられなかった。産休に入るための交渉をする過程でも「産休を取るなら妊娠5か月時点である4月から1年のみ」「復帰後はフルタイムで」など法律に反する説明を繰り返した。
女性は切迫早産になり、入院した後に無事出産したが、会社の虚偽説明などに不信感を持ち、また妊娠期の過重労働が切迫早産を引き起こしたとして、運営会社「不二ビューティ」(高野友梨社長)を相手取り、訴訟を起こした。
来るべき大介護時代に備え、識者からは、男性社員が家庭を顧みずに滅私奉公で働くスタイルはすでに時代にそぐわないことが指摘されている。連合の調査では、4人に1人がマタハラ被害を経験しているとの結果も出ている。足の引っ張り合いともいえる3大ハラスメントが解消され、労働環境が大きく改善されなければ、日本に未来はないと思うが、いかがだろう。(編集担当:横井楓)