NHKがネット課金見送り まずは「公共放送」としての理解を得よ

2014年10月19日 23:14

 テレビ放送とインターネット―インターネットを通じて人気テレビ番組が違法に流されるなど、インターネットの存在に頭を悩ませてきたテレビ放送局が今、対応を検討している。しかし、NHKと民放のその内容は、あまりにもかけ離れたものだ。

 10月14日、NHKが3年ごとに立てている経営計画案で受信料制度の変更を見送ったことがわかった。今回の計画案は2015年~17年の3ヵ年のもの。籾井勝人会長は「東京五輪に向けて実現を急ぐ必要がある」と述べ、3年以内に放送法を改正してインターネットを通じてテレビ放送と同時にパソコンやスマートフォンでも番組の視聴できる「同時再送信」を可能にし、インターネットを通じた視聴者からの受信料徴収を目指していたが、今回の経営計画での制度変更は見送った。

 NHKの制度変更見送りは、ネット課金の前提となる法改正の根回しができていなかったというのが実際のところだ。本来であれば法改正に向けた総務省や国会議員との協議が必要だが、十分な協議はなく改正時期の目処も立たなかったことで、NHKは見送りを余儀なくされたといえるだろう。

 NHKのネット課金見送りの1ヵ月前、9月18日に在京の民放キー局5社が過去番組をインターネットで、無料で流す共同サイトを作る検討を始めることで合意した。日本民間放送連盟(民放連)の井上弘会長によると、共同サイトではCMを飛ばして見られない技術を導入して広告収入を得ることで無料配信を実現する考えだという。ネットに民放番組を流す違法行為が横行している現状への対応としてNHKとは「逆」の対応を民放連はとった格好だ。

 NHKは自らのホームページで「なぜNHKは受信料をとるのか」に「公共放送NHKは、“いつでも、どこでも、誰にでも、確かな情報や豊かな文化を分け隔てなく伝える”ことを基本的な役割として担っています。そして、その運営財源が受信料です」と答えている。確かに民放連が無料で番組を流すことができるのは広告収入があるからだ。しかし、公共放送としての信頼があればNHKへの批判はこれほどまでに強くならなかったのもまた事実であり、この対応の差に疑問をもたれていること事態が、NHKが今岐路に立っていることを象徴している。NHKはネット課金をするかどうかといった「出口」の議論をする前に、視聴者がNHKの公共放送に納得をしているかという「入口」の議論をまずすべきだろう。(編集担当:久保田雄城)

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