ホワイトカラー・エグゼンプション導入は本当に必要なのか

2014年10月14日 11:56

 厚生労働省は9月10日、労働政策審議会で「ホワイトカラー・エグゼンプション」などの新制度導入を含めた労働時間に関する見直しについて話し合った。ホワイトカラー・エグゼンプションとは、社員の高い技能を生かした働きに応じてその成果を評価する形で賃金が支払われる仕組みを指す。今年5月に安倍首相が開いた産業競争力会議で提案され、労働規制の立場にある厚生労働省の同意を得て、新成長戦略の一環として6月に閣議決定した。

 「残業代ゼロ」制度として議論されているが、長時間労働の温床になる可能性もあり、過労死を招くことにもなりかねない。そのため年収1,000万円以上を目安に「職務の範囲が明確かつ世界レベルの高度専門職」を対象とすることが提案されている。2016年春に施行することを目指し、政府は15年の通常国会で関連法の改正案を提出する予定だ。

 現行制度でも裁量労働制がとられ、管理職の他一部の職種において、成果で賃金を決定することは認められている。裁量労働制とは、労働時間の長さが必ずしも成果や業績に直結することのない職種で、実働時間で賃金を算出するのではなく「みなし時間」によって給与を決定する。例を挙げると、研究者、ソフトウェア開発者、コンサルタント、ジャーナリスト、アナリスト、弁護士、公認会計士、税理士などが該当する。裁量労働制は休日や深夜勤務に対して残業代が生じる仕組みになっているが、ホワイトカラー・エグゼンプションにはそのような規定は盛り込まれていない。

 ホワイトカラー・エグゼンプション導入によって、無駄な残業がなくなり社員のモチベーションも高まると、産業界で期待が高まっている。新制度導入について、人材紹介サイトを運営するエン・ジャパン<4849>が7月1日~31日にかけてアンケートを実施したところ、「ホワイトカラー・エグゼンプション制度は必要」と答えたのは年収1,000万円以上の人で37%だったのに対し、年収499万円以下の人は23%にとどまり、開きが生じる結果となった。

 しかし全体的には「不必要」と答えた割合の方が多く、年収1,000万円以上で49%、年収499万円以下では57%となった。調査対象となったのは年収499万円以下の人が724人、1,000万以上の人が210人。ホワイトカラー・エグゼンプションの問題点として、成果の定義が不明確なままでは正当な報酬が得られないということも挙げられる。新制度導入にはさらに慎重な議論が必要だろう。(編集担当:久保田雄城)

関連記事

最新記事