経済的理由による大学中退20.4% 学費の高さが壁か
2014年10月11日 20:59
文部科学省は2012年度に大学や短期大学を中退した学生の実態調査を実施し、経済的理由が20.4%と最も大きな割合を占めていることを明らかにした。同理由による中退者数の割合は、前回調査時の07年よりも6.4ポイント増加している。08年9月に起きたリーマンショックを引き金とする景気低迷により、家庭の経済的状況が悪化したことを受けて中退する学生が増加したが、現在は回復傾向にある。しかし、状況が改善するまでにはまだ時間がかかるようだ。
調査は今年2月~3月に行われ、国立、公立、私立の大学と短期大学、高等専門学校を合わせた1,191校を対象とし、うち1,163校から回答を得て集計された。文部科学省は調査の結果を踏まえて、貧困に苦しむ学生支援対策を拡大していく方針だ。無利子の奨学金や授業料の減免の対象者を増やせるよう、来年度予算の概算要求に加えた。
12年度に大学や短大などを何らかの理由により中途退学した人は約8万人にのぼる。学生全体の2.7%に相当する数だ。中退の理由は「経済的理由」20.4%の他、「転学」が15.4%、「学業不振」14.5%、「就職」13.4%が挙げられている。中退した学生のうち、私立大は6万5,066人で、国立大は1万467人、公立大は2,373人だった。
中退する学生の中で私立大が目立って多いのは、学費の高さが関連しているのではないか。文部科学省の調べによると、初年度の学費は国立大で約81万円、公立大で約93万円だが、私立大は文系で約114万円、理系で約149万円、医歯系の場合は約466万円にもなる。在学中の授業料や施設設備費用などを合わせた場合には、国立大で約214万円、公立大で約215万円が必要となる。一方、私立大は文系で約360万円、理系で492万円、6年制の医歯系であれば約2,176万円にものぼる。国立大と私立大では、およそ2倍以上も開きが生じているのだ。
また、授業料を滞納している学生も多く、約1万1,000人に上っている。景気の先行きが見えない中で収入の増加が見込めない家庭も多く、教育費の負担は増大している。将来の社会の担い手に十分な教育の機会を整えることは国に課せられた役目だろう。(編集担当:久保田雄城)