一人っ子政策の後遺症? 中国ニート増加で「すねかじり禁止法」検討

2014年10月8日 08:29

 中国で成人した子どもが働かないで実家にとどまり、年老いた親に生活の面倒をみてもらうという「ニート」が増加している。各地方政府は対策として「すねかじり禁止法」を制定し、子の自立を促す法案を検討している。

 中国の機関が広州市在住の60歳以上の高齢者300人を対象に行った生活習慣に関する調査によると、60~75歳までの人のうち自分で生活を維持している高齢者230人の中で、「80後」(1980年代以降に生まれた子ども)を持つ人は約半数にのぼった。このうち「80後」が親に生活費を支払わないというケースは50%以上にもなり、さらに経済的にも生活面でも親に依存して暮らしているニートに相当するのは約20%であることが分かった。

 中国では79年より「一人っ子政策」を導入し、人口規制政策をとってきた。そのため80年代以降に生まれた子ども「80後」の多くは一人っ子であり、幼い頃は「小皇帝」とも呼ばれて両親と祖父母から溺愛されて育てられた人が多い。愛情を一身に受けて甘やかされて育った半面、自立心に乏しい傾向があるという。精神的にも肉体的にも打たれ弱さがあり、仕事が長続きしなかったり、社会に出ることを避けて就職そのものを諦めたりする者も珍しくない。また、賃金が安すぎるあまり自活できないという事情もあり、北京大が実施した別のアンケートでは、大卒者でも約40%が実家で生活しているという結果が出た。

 ニートや引きこもりの増加は労働人口の減少にも繋がり、少子化で人材確保が困難になりつつある日本でも関心が高い問題だ。しかし今回中国で議論されている「すねかじり禁止法」の背景には、雇用や賃金問題などの社会的事情に加えて、さらに深刻な理由が絡んでいる。

 中国では同居する子どもが親に暴力をふるう事例が増加しており、裁判も起きている。子どもが多額の金銭を要求することで親が生活苦に陥ったという例も報告されており、江蘇省の議会では高齢者の権利を保障する法案について議論がなされ、「独立した生活が可能な成人が高齢の親に生活援助を求めた場合、親は断ることができる」と規定することが検討された。山東省や浙江省杭州市などでも同様の法改正が議論されている。家庭の事情に政府が介入することへ疑問の声も上がっている一方、法律による取り締まりもやむをえないというほど、事態は深刻なのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)

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