法改正後も臓器提供件数が低迷 社会の関心薄れ

2014年10月7日 10:49

 臓器移植法が改正され、2010年からは書面による意思表示がなくても家族が承諾すれば臓器移植を行えるようになった。15歳未満の子どもからの臓器提供も解禁されたが、提供件数は低迷している。日本臓器移植ネットワークによると、心臓や肝臓、腎臓などに重い病気を抱え臓器移植を望んでいる患者は現在約1万3,000人にのぼる。しかし法改正が行われた後も提供件数は伸び悩み、10年で113件、11年で112件、12年で110件、13年には84件と減少し、本年は8月末の時点で44件となっている。

 臓器移植は1997年に臓器移植法が施行されたことにより、脳死下の臓器移植が認められるようになった。「脳死」を「人の死」と認め、生前に本人が書面にて臓器移植の意思表示を明らかにしていた場合に限り、家族の承諾を得てその体から臓器を摘出することができるようになった。自身の臓器提供に判断を下すことができる年齢については議論が重ねられ、最終的には民法を基準として、遺言が可能とみなされる年齢を参考に「15歳以上」からがふさわしいという結論に落ち着いた。

 しかし、15歳未満の臓器提供ができないということで、子どもの患者は国内で臓器移植手術を受けることができず、海外での治療に希望を託すしか方法がなかった。外国への渡航費や莫大な治療費を集めるために募金活動を行うケースも多く、法の見直しが行われることとなった。2010年からは家族の承諾があれば本人の意思表示が不明な場合でも臓器提供が可能となり、実質的に提供者の年齢制限はなくなった。

 切実な思いで臓器提供を待っている患者にしてみれば大きな転換となったが、社会の関心は徐々に薄らいでいっているのではないか。厚生労働省が13年8月22日~9月1日に20歳以上の国民を対象に実施した3,000人規模の世論調査によると、臓器移植に対する関心が「ある」と答えた人は08年で60.2%だったが、13年で57.8%となりやや落ち込むという結果だった。反対に「関心がない」と答えた人は08年で39.8%だったのに対し13年には42.2%と上昇している。

 関心があるとした人の多くは「マスメディアで話題になっているから」と答えていた。法整備に関する議論が一段落しメディアで話題にのぼることも少なくなっている今、関心を社会に定着させる新たな取り組みが必要となっているのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)

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