【コラム 山口利昭】コーポレートガバナンス・コードにおける監査役制度の位置づけ

2014年10月5日 21:09

【10月5日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 当ブログの論客のおひとりでいらっしゃる「いたさん」から、先週の日本内部統制研究学会に対する厳しいご意見をコメント欄でいただきました(どうもありがとうございます)。ご指摘のとおりで、たくさんの監査役さん(監査役OBの方も含め)にお越しいただいたにもかかわらず、またガバナンス改革というテーマであったにもかかわらず、監査役さんへの期待についてほとんど触れずじまいだったこと、たいへん反省をしております。すべて仕切り役だった私の責任です。

 そのぶん(まったく関係はありませんが)、第2回の金融庁・コーポレートガバナンス有識者会議(コーポレートガバナンスコード策定のための会合です)では、コードにおける監査役の記述に関してかなり盛り上がったそうです(ロイターの記事はこちら(http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2014/09/133823_1.php)です)。経済界や投資家から「日本の監査役の役割はわかりにくい、そもそもきちんと活用されていない」との意見が出されたそうで、序文に監査役の役割を記述したり、丁寧に説明することが要望されていた、とのこと。

 監査役の職務(権利と義務)は、会社法で定められていますので、その内容を超えて「期待される役割」をコードに書き込むというのは、かなりむずかしいのでしょうね。もちろん事業戦略に意見を述べ、妥当性監査ということまで積極的に行っておられる監査役さんもいらっしゃいますが、中小の上場会社では、そこまで期待できないところも多いと思います。最近ではセイクレスト事件判決やニイウスコー事件判決のように、日本監査役協会が策定した監査基準をもとに監査役の善管注意義務違反の有無を判断する事例などもみられるので、強制力のないガバナンスコードといえども、監査役の職務について詳細に記述されてしまうことの「気持ち悪さ」みたいなものはあるかもしれません。記述にあたっては、仕組み(監査と監督の区別)と機能(どういった目的のために何をすべきか)をしっかり分けて議論しなければいけませんね。

 あと、上記有識者会議では、監査役(会)設置会社と対比して(会社法改正で新た認められる)監査等委員会設置会社について話題に上っていたようです。私はあいかわらず監査等委員会設置会社への移行には懐疑的でありまして、監査等委員である取締役さんのリーガルリスクは監査役に比べてかなり高いように思っているのですが、あまりそのあたりには関心が向けられてないようです。個人的意見の詳細は、また講演等でお話しますが、上記のセイクレスト事件第一審判決(監査役の法的責任認容)、昨年の愛知高速交通事件第一審判決(いま債権法改正で話題となっている身元保証法5条に関連した監査役の過失認定)、少し古いですが平成18年の青森住宅供給公社事件(いわゆる「アニータ事件」ですね)第一審判決(監事の責任を否定)などを参考にしますと、監査等委員たる取締役の内部統制構築義務違反(構築指摘義務違反)が、そのまま「任務懈怠」と認定されやすいように思います。【了】

 山口利昭(やまぐちとしあき)/山口利昭法律事務所代表弁護士。大阪府立三国丘高校、大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(平成2年登録 司法修習所42期)。現在、株式会社ニッセンホールディングス、大東建託株式会社の社外取締役を務める。著書に『法の世界からみた会計監査 弁護士と会計士のわかりあえないミソを考える』 (同文館出版)がある。ブログ「ビジネス法務の部屋」(http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/)より、本人の許可を経て転載。

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