用途拡がるリチウムイオン電池 賢く監視してさらに扱いやすく
2014年10月5日 12:45
携帯電話やスマートフォンの普及によって、一般にも広く知られるようになったリチウムイオン電池。富士経済の調べによると、リチウムイオン二次電池材料の世界市場は2013年度で5670億円、2018年には2013年比163.8%となる9285億円にまで拡大するとみられている。とくに最近では、携帯やスマホ、ポータブルゲームなどのモバイルコンシュマー用途だけでなく、太陽光発電などと連動した蓄電システムや、ハイブリッド電気自動車(HEV)および電気自動車(EV)、電動アシスト自転車など、成長市場と連動して、リチウムイオン電池の需要範囲も広まっている。
リチウムイオン電池は、小型軽量であることのほか、公証電圧が3.6ボルトと高電圧なことや、エネルギー密度が非常に高いこと、また同じ駆動電圧ならセル数を少なくできるなどの特長がある。ただしその反面、過充電や過放電を起こさないように常にセル電圧を監視・管理する保護回路が必要になる。
この分野で、ロームグループのラピスセミコンダクタが9月22日、リチウムイオン電池監視システムの構成を最適化するLSI「ML5236」を発表し、話題になっている。従来品との大きな違いは、電流の流れを制御するトランジスタにNMOS FETを採用した点にある。これまでは、電圧を加えるとスイッチがオフするPMOS FETが用いられるのが一般的だったが、この分野に向けたものは高価であることと、種類が制限されてしまうという課題があった。
新製品では、最大14直列セルまでのリチウムイオン電池監視システムの電圧、電流、温度、充電器・負荷接続を監視し、高電圧側でNMOS FETによる充放電制御を可能にした。電圧側NMOS FET制御方式と14直列セル対応を両立させた製品は業界初(ラピスセミコンダクタ調べ)となる。また、同製品はマイコンに依存せずに電池監視LSI単体で簡易的に電池の保護を行う2次保護機能も搭載。システムの信頼を高めるほか、従来品では複数のICに分散されていた電池監視機能と集約することで、システムの小型化にも貢献する。
エネルギー密度の高いリチウムイオン電池は、産業や車載用途、蓄電装置などでの需要の拡大が世界的にも加速度を増している。日本の半導体企業がその世界的なシェアにどこまで食い込めるか。他の半導体部品同様、リチウムイオン電池監視LSIにも「システムの小型化」、「信頼性向上」、「設計容易性の向上」が求められるが、それら全てを兼ね備えたラピスセミコンダクタの最新LSIに大きな可能性を感じずにはいられない(編集担当:藤原伊織)