激化するアジアでの労働者獲得競争 日本企業の勝機は?

2014年10月3日 17:07

 居酒屋チェーンの「甘太郎」や焼肉チェーンの「牛角」を展開するコロワイドが、外国人の正社員を増やし、アジアでの展開を強化していく。同社の計画では国内の留学生や海外大学の新卒者を中心に、今後5年間で1,000人を増員。2014年度以降、フランチャイルズ事業などで、ASEAN諸国を中心としたアジア各国で450店舗体制を実現する予定だ。なお8月時点での同社の外国人正社員数は131人である。

 現在、外国人の採用を増やす企業は増えている。08年からはローソン〈2651〉が外国人の積極採用を進め、その採用比率を30%に高めた。また楽天〈4755〉が今秋の新卒採用者143人のうち過去最多の116人を外国人が占めなるなど、多くの日本企業で多くの異なる文化背景を持つ人材を受け入れるダイバーシティ経営が進んでいる。

 企業が外国人の積極採用を進めるには、2つの理由がある。1つ目は不足する労働力人口を補うため。2点目は飽和した日本市場から成長市場に進出するためだ。特に東南アジア市場は投資分野でも、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の次がVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)であると言われているように注目されており、日本企業の進出が盛んに行われている。

 例えば、大手流通グループのイオン〈8267〉はアジアシフトを加速させ、今後3年間でインドネシア、ベトナムなどこれまで未開拓の国への出店を積極的に進める予定だ。同社は多民族国家のマレーシアで30年間培った対応力を軸に、域内売上高を5000億円へする目標を出している。そのため現地での採用活動に力を入れる方針だ。

 一口に東南アジアと言っても、国ごとに民族構成や所得水準がばらつくモザイク市場である。地域に合わせた経営展開を行うため、現地の社員の力は欠かすことのできない戦力だ。しかしアジアの学生の就職先では、日本企業の人気が高くないのが実情だ。また欧米諸国や中国、インドなどの国も獲得に力を入れるなど競争は激化。欧米の企業では、優秀な学生に初任給で1,000万円超えの年収を約束する例もある。横並主義の日本企業の風土より、実力に応じて報酬や権限が与えられる欧米などの企業に、優秀な学生ほど流れる傾向があるという。

 日本経済が成長を続けるためには、新たな市場の創造と労働力の確保は必須である。アジアで日本企業の負けられない戦いが始まった。(編集担当:久保田雄城)

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