【鈴木雅光の投信Now】直販投資信託会社の販売戦略に変化の兆し

2014年10月3日 11:29

  直販投資信託会社をご存じだろうか。「直販」というのは、投資信託会社が自社運用ファンドを、銀行や証券会社などの販売金融機関を通さず、自ら販売することだ。この直販をメインにしている投資信託会社が、日本には8社ある。

  さわかみ投信、セゾン投信、レオス・キャピタルワークス、コモンズ投信、ありがとう投信、クローバー・アセット・マネジメント、ユニオン投信、鎌倉投信がそれだ。いずれの投資信託会社も、直販に際しては購入手数料を取らず、保有期間中に差し引かれる運用管理費用(信託報酬)の料率も、低めに抑えられている。

  商品性としては決して悪くはないが、なぜか純資産残高が伸びない。8月時点における、公募型投資信託全体の純資産残高は85兆9080億円。このうち直販を通じて販売されている投資信託の純資産残高は5516億円で、全体に占める比率はわずか0.64%に過ぎない。それだけ銀行や証券会社が持つ販売力が強いということだ。

  こうした環境のなか、直販投資信託会社にも変化が見え始めている。

  あくまでも直販にこだわる「直販原理主義」的なところと、緩く販売金融機関とつながっていくところとに分かれてきたのだ。

  たとえばさわかみ投信やありがとう投信、クローバー・アセット・マネジメント、ユニオン投信、鎌倉投信は直販へのこだわりが強いが、レオス・キャピタルワークスは12の販売金融機関が扱っているし、コモンズ投信も複数のネット証券会社などが販売している。あくまでも直販をメインにしながらも、ベクトルが同じであれば、販売金融機関と手を組むことも選択肢のひとつと考えているのが、この2社だ。

  またセゾン投信は現状、直販のみだが、先ごろ日本郵便との業務提携を発表。日本郵便は、セゾン投信への出資を通じ、ビジネス拡大によって生じた利益の一部配当を受ける。

  今後、全国2万4000局ある郵便局を拠点にして、全国規模のPR展開が検討されている。ゆうちょ銀行がセゾン投信のファンドを販売することはないが、セゾン投信にとって、全国に張り巡らされた郵便局網をPR拠点に使えれば、将来的なビジネス拡大に大きく寄与するだろう。

  直販投資信託会社が今後、さらに伸びるのかどうか。その分水嶺に来ているのは事実のようだ。(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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