【コラム 金澤悦子】やりがいのある仕事とは

2014年9月29日 19:41

【9月29日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

■ルールを知らずにゲームを続ける女性たち


 者は働く女性に特化したキャリアデザインスクールを運営している。

 先日、受講生同士やりとりできるグループメールでこのような投稿があった。

<せっかく面白いことができそうな部署にいるにもかかわらず、本来の仕事とは違う入力のみの作業を命じられ凹んでます・・・>

 仕事柄、日々働く女性たちに接する中で、自分の能力よりも低いレベルの仕事を与えられ、落ちこみ憤慨する姿を目にする機会は多い。

 「能力が足りないからでしょ」と言われればそれまでであるが、女性というだけで軽く扱われたり、育休明けだからと降格や左遷されたなど、理不尽なケースも少なくない。

 筆者も20代の頃に、自分よりも営業成績の振るわない男性陣が次々に昇進していくのをやりきれない思いで見ていた。

 ある日社長に疑問をぶつけてみると、こんなことを言われた。

 「だって、エツコは結婚するだろう?」(まったく予定はなかったけれど・・・)

 だから、彼女たちの悔しさ、もどかしさ、疎外感は十分に理解できる。

 しかし、残念ながら「なぜもっといい仕事を与えてもらえないのか」、「なぜ認めてもらえないのか」といくら考えてもこの問題は解決しない。

 『ビジネス・ゲーム』(ベティ・L・ハラガン著)によれば、男子は野球などのゲームを通じて「チームとは何か」を学ぶ。チームプレイの中では個人とチームの利益が対立する場合、個人のそれを犠牲にすることが前提だと説く。

 スポーツとビジネスは似ている。野球に例えれば、目的はチーム(=組織)が勝つことであり、スター選手がホームランを打つ(=実績を上げる)ために、どんなにホームランを打ちたくても、それが役割であるなら、バントで出塁する(=サポート業務を行う)ことがチームプレイなのである。

 しかし、女子の多くはこのプロセスを経ないまま成長する。働く女性の多くは、ルールを知らないまま試合に出ているようなものである。

■ビジネスという試合にスタメン出場する方法


 ビジネスという試合にスタメン出場するためには、当たり前のことであるがポジションが決まったら「自分の持ち場をきちんと守る」ことである。

 「そんなこと言ったって、仕事がつまらないんだもん」というあなたに質問。
 その仕事、本当につまらないだろうか?

 10年ほど前のベストセラー本『生協の白石さん』は、学生から寄せられる『一言カード』に書かれた質問や要望、ときには「愛は売っていますか?」などの問いに対する白石さんのウイットに富んだ回答が禅問答のようだと話題になり、書籍化にまで発展した一冊。

 ちょっとした工夫で自分も周囲もハッピーできる好例である。

 また、某上場企業の社長となった女性は同社に一般職で入社して長い間お茶くみOLをしていたそうだ。どうせならお茶くみの達人になろうと、役員ひとりひとりのお茶の好みを暗記、お茶をだすタイミングも工夫した。

 「お茶くみがスゴイ女子社員がいる」と話題になり、新規部署を立ち上げようという話が持ち上がったとき、真っ先に候補に挙がったそうだ。お茶くみが社長就任への第一歩なのだから、人生とはおもしろい。

 「つまらない」という視点は思考停止を招く。また、「〜だったら」という条件付の考え方も、その条件はいつまでたっても整わないので危険だ。

 逆にどんなに華やかな仕事であっても、その陰には結果を出さなければならないプレッシャーや人づきあいの煩わしさもあるだろう。

 つまり、はじめから「やりがいのある仕事」などない。
 大切なのは「やりがいを見いだす目」なのである。【了】

 かなざわ・えつこ/株式会社はぴきゃり代表取締役・編集長。1991年、現株式会社リクルートホールディングス入社。94年、株式会社キャリアデザインセンターに創業メンバーとして参画。01年、日本初の総合職女性のためのキャリア転職マガジン「ワーキングウーマンタイプ」を創刊し、編集長に就任。5000人以上の女性を取材する。現在、女性限定「お仕事ブログ」コミュニティサイト「はびきゃり」(http://happycareer.jp/con/)の運営や、オリジナル素質診断ツール「i-color」を使ったセミナーを通じて、年間300人以上の女性たちを「ココロとサイフが満たされる仕事発見」へと導く。著書に、「ハッピーキャリアのつくりかた」(ダイヤモンド社)等がある。

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