【野田聖二の経済教室】8月の景気ウォッチャー調査〜先行きの景況感は小幅改善

2014年9月25日 12:59

【9月25日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 9月8日に、内閣府から8月の景気ウォッチャー調査が発表されました。

 メディアなどで公表されている原データでは現状判断DIが前月から3.9ポイントの大幅な悪化となり、先行き判断DIも1.1ポイント悪化しました。一方、季節調整値の方は現状判断DIが2.4ポイントの悪化と原データよりも悪化幅が小さく、また先行き判断DIは0.5ポイントの上昇で、景況感の実態は原データが示すほど悪くはないとみられます。

 景気ウォッチャー投資法のルールでは、現状判断DIが1ポイント以上悪化したものの、先行き判断DIが改善しているので、景気は上昇基調が続いているとみて「売りサイン」は出ないことになります。

 以下では、全体の現状判断DIと先行き判断DIについては季節調整値の方で、また業種別のDIについては、内閣府から業種別の季節調整値が発表されていないため原データの方で話しを進めることにします。

 今回の調査をみるにあたってのポイントは、消費が振るわない一因とみられている天候不順の影響が現状判断DIにどのように現れるかという点と、前回調査で4か月ぶりに悪化した先行き判断DIが再び持ち直すのか2か月連続で悪化するのか、という点でした。

 結果は、先行き判断DIが持ち直す中で現状判断DIが2.4ポイントも落ちたその主な理由は、夏場に西日本を中心に襲った台風や大雨の影響が大きかったと考えられます。

 業種別の現状判断DIをみても、「旅行・交通関連」や「レジャー施設関連」のDIが特に大きく悪化しており、夏休みの書入れ時となる業種が悪天候によって大きな打撃を受けたことがわかります。地域別では沖縄の現状判断DIが14.4ポイントの悪化と全国で最も大きく落ち込んでいることにもそれが表れています。

 今回、先行き判断DIが持ち直していることから、景気の基調がどんどん悪くなっていっているわけではないことが確認されましたが、改善幅は0.5ポイントと小幅にとどまっており、力強さはみられません。

 また、今回の調査では、雇用関連DIが現状判断は3か月連続で、また先行き判断は2か月連続で悪化しており、消費増税後に景気が踊り場に入ったことを示しています。

 前々回のブログでも述べたように、景気は夏から秋にかけて踊り場を脱して回復軌道に戻るとみており、景気ウォッチャーの景況感の改善もしばらく続く可能性がありますが、一方で、景気に先行する指標群が弱くなりつつあることから、DIが昨年11月につけた最高値に迫るような力強い回復とはならないのではないかと考えています。過去の局面で言えばちょうど2006年後半のような「ピークアウト後の緩やかな戻り」(このグラフを参照)に似たものになるのではないかとみています。

 来月発表される9月の景気ウォッチャー調査では、引き続き先行き判断DIの動きとともに、足元で再び進んでいる円安の影響が調査結果にどのように反映されるのかに注目したいと思います。【了】

 野田聖二(のだせいじ)/埼玉県狭山市在住の在野エコノミスト
 1982年に東北大学卒業後、埼玉銀行(現埼玉りそな銀行)入行。94年にあさひ投資顧問に出向し、チーフエコノミストとしてマクロ経済調査・予測を担当。04年から日興コーディアル証券FAを経て独立し、講演や執筆活動を行っている。専門は景気循環論。景気循環学会会員。著書に『複雑系で解く景気循環』(東洋経済新報社)『景気ウォッチャー投資法入門』(日本実業出版社)、著者のブログ『私の相場観』がある。

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