長生きが喜べない 長寿大国日本の高齢者虐待の現状

2014年9月23日 21:06

 2014年9月8~14日までの7日間で、全国一斉「高齢者・障害者の人権あんしん相談」強化週間が法務省を主体に行われた。厚生労働省が13年に発表した高齢者虐待防止に関するデータでは、養介護施設従事者による虐待の相談・通報件数と虐待件数は増加している一方、養護者による相談・通報件数と虐待件数は減少。しかし虐待されている高齢者15,627人の内、86.5%の方が虐待者と同居しており、虐待が家庭内という密室の中で起きている実態がある。

 虐待の種類は主に、身体的虐待、介護等放棄、心理的虐待、経済的虐待の4種類あり、発生割合と要介護度に相関関係が見られる。つまり要介護度が低いと身体的虐待や心理的虐待の割合が多いが、要介護度が高くなると介護等放棄の割合が一気に高くなるのだ。また、要介護度と虐待の深刻度との関係にも相関関係が現れており、要介護が重い場合、虐待の深刻度も増す傾向がある。

 さらに注目すべきデータがある。それは虐待者の性別である。被虐待者との続柄で見た場合、息子からが41.6%、夫からが18.3%で、男性からの虐待の割合が合わせて6割近くとなっている。また介護従事者のデータでも虐待者の41%が男性であり、介護従事者の男性割合が21.4%ということを踏まえると男性の虐待者が多い傾向があるといえる。

 一方で厚生労働省の12年度の調査によると児童虐待の件数は66,701件で、1999年の児童虐待防止法施行前の5.7倍となっている。しかし、この件数は近隣・知人の通告と警察からの通告が急増した結果でもある。社会問題となった児童虐待に社会が敏感になったため、これまで密室で起きていた虐待が顕在化してきているとも言えるだろう。

 それではどうすれば高齢者虐待は防げるのだろうか。その道筋となるのが、介護の社会化である。現在、日本では介護を社会で支えるという介護の社会化を実現するため介護サービスの充実化を進めている。介護人材を増やし、これまで家族が行っていた介護を社会で負担しようという狙いがある。そのため家族、介護従事者の2者で連携を取りあうことで介護の負担を分担すると共に、監視の目を増やすこともでき虐待を未然に防ぐことができるだろう。事実、虐待の相談・通報者26,562人の内、32.0%が介護支援専門者で家族・親族の3,158人の約3倍近い数字となっている。ちなみに同調査では警察が10.6%の2,812人となっており、介護支援専門者と警察の相談・通報が約4割を占める結果となった。

 総務省が14日発表した調査結果によると、14年の65歳以上の高齢者人口は3,296万人。ほぼ4人に1人が高齢者となり、人数・割合ともに過去最高を記録した。安心して長生きできる国の実現が求められている。(編集担当:久保田雄城)

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