東京医科歯科大、アルツハイマー病発症前の超早期病態の一部を解明
2014年9月20日 20:08
東京医科歯科大学の岡澤均教授らによる研究グループは、アルツハイマー病発症前にタンパク質リン酸化シグナルの異常が起きていることを明らかにした。
アルツハイマー病患者の脳組織には、細胞外に老人班、細胞内に神経原線維変化という異常構造物が存在しており、前者はアミロイドベータ、後者はリン酸化タウというタンパク質の異常沈着であることが知られている。
今回の研究では、アルツハイマー病モデルマウスとアルツハイマー病患者の脳のタンパク質を網羅的に解析したところ、老人班の異常タンパク質凝集が起きる前にタンパク質リン酸化シグナルの異常が超早期病態として存在することを発見した。
アルツハイマー病に対しては、2000年代以降、アミロイドベータの脳内凝集による老人班の形成を抑制する治療法の臨床試験が行われてきたが、有効性が立証されていない。また、重要な知見として、この治療後に死亡したアルツハイマー病患者は、老人班は消失していたにも関わらず症状が改善していなかった。
この経緯を踏まえて、現在のアルツハイマー病研究の重要課題は、発症前またはアミロイドベータの凝集前の超早期病態を明らかにし、そのような超早期病態に介入することで治療ができることを示すことにある。
今回の研究成果は、アルツハイマー病の発症前、凝集前の超早期病態の一端をとらえた成果といえる。さらに研究を進めることでアルツハイマー病の進行を抑制し、治療に導く治療法を開発できる可能性がある。
なお、この内容は9月17日に「Human Molecular Genetics」に掲載された。