チンパンジーのこどもを母親以外の個体が世話行動 京大が発見

2014年9月17日 16:03

 京都大学の友永雅己准教授らによる研究グループは、2歳の二卵性双生児のチンパンジーに対して母親以外の大人も世話行動を取っていることを発見した。

 ヒトの場合、双子の子育てに伴う育児ストレスが母親の抑うつ状態を引き起こしたり、虐待をはじめとする不適切な養育を引き起こすリスクファクターになったりすることが知られている。さらに、チンパンジーの場合は多くの場合、双子の一方もしくは両方が成人になるまでに死亡することが分かっており、これは母親が双子の子供を育てきれないからであると考えられてきた。

 今回の研究では、のいち動物公園で、2歳になった性別の異なる二卵性双生児のチンパンジーに対して母親以外の大人のチンパンジーがどのような行動を取るのかを1年に渡って観察した。その結果、双子の子供それぞれに対して、母親以外の大人による世話行動が観察され、特に女の子に対しては血縁関係のない大人のメスが「背中に乗せて移動する」といった世話行動を取っていることが分かった。

 従来、チンパンジーの子育ては基本的に母親だけで行い、他の個体が関わることはあまりないとされてきた(あるとしても血縁個体が圧倒的)が、今回の結果はその常識を覆すものとなる。このように母親以外の大人が子育てに関わったことが、双子の自然哺育の成功につながった可能性を示している。

 母親以外の大人が子育てに関わった背景については、子供チンパンジーが自発的に母親以外の大人との社会関係を切り開いたと考えられるという。双子のうち母親と一緒にいることがやや少ない「サクラ」は、他の大人に背負われる際に、その大人を引っ張り、おんぶを要求しているようなジェスチャーが観察された。

 研究メンバーは、「この研究は、ヒトでは頻繁に見られる、母親以外のおとなによる子育てがいかに生じてきたか、その進化的側面を考察する上で重要と考えられます。現在も観察は継続しており、母親と双子たちの関係や双子と母親以外の大人たちとの関係が、双子たちの発達に伴い、どのように変化していくのかを検討していくことを考えています」とコメントしている。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。

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