精神障害者の雇用義務化 問われる企業の対応力

2014年9月14日 23:38

 厚生労働省は2011年に、これまでの4大疾患に精神疾患を加え5大疾患とした。これに先立つ09年から10年にかけて同省は、精神障害者の雇用促進をサポートする精神障害者雇用促進モデル事業を実施。複数の企業が精神障害者の雇用に対する施策を打ち、新規雇用を行った。13年には企業の雇用障害者数と雇用率が過去最高を記録し、企業の精神障害者の雇用対策が進んでいる。

 欝(うつ)や統合失調症などの精神疾患になった従業員を雇用し続けるため、多くの企業が試行錯誤している。それではなぜ現在、企業が精神障害者の雇用を推し進めているのだろうか。その背景には18年4月からの障害者雇用義務化の法改正が絡んでいる。

 法案の施行を前に、企業の受け入れ態勢の構築など課題も山積しているが、企業の側にとってのメリットは大きい。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、過去3年間の病気休職制度利用者の退職率の平均値は37.8%。退職理由では、メンタルヘルスががんに次ぎ2番目となっている。

 そのため精神障害者の受け入れ態勢を整備することは、社内で精神疾患になった社員にとっての受け皿となりえる。フォローアップ体制が整備されれば、精神疾患になったとしても退職することなく、優秀な人材の社外流出を防ぐことが可能だ。退職者が出ることによって生じる新規採用コストや新人教育に関するコストも削減できる。

 また現在ブラック企業と呼ばれる劣悪な就労環境で働かせる職場が社会問題となっている。しかし精神障害者の雇用を進めることができれば、働きやすい職場環境をアピールすることができ、企業のイメージアップに繋がるだろう。内閣府の発表したデータによると日本の精神障害者の数は320万人。

 国民の25人に1人が何らかの精神疾患を抱えている計算となる。安倍内閣が掲げるアベノミクス。その成長への道筋の中で、女性や高齢者が働きやすい環境を整えることで、社会に活気を取り戻すという考えが記されている。そこにこれまで労働市場から退場せざる得なかった精神障害者が加わった先に、より力強さを増した日本経済の姿があるはずだ。(編集担当:久保田雄城)

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