暴力的なゲームは「怒り顔」の認知を鈍らせる―東大が研究
2014年9月12日 14:12
東京大学の玉宮義之特任研究員・開一夫教授らによる研究グループは、暴力的なテレビゲームで長期間遊んだ時の長期的な影響を明らかにした。
暴力的なテレビゲームが与える悪影響については、様々な実証研究がおこなわれてきたが、長時間遊んだ時の長期的な影響については明らかになっていなかった。
今回の研究では、被験者に約1カ月間(合計16時間)、暴力的もしくは非暴力的なテレビゲームで遊んでもらい、脳波測定と質問紙調査を実施した。その結果、暴力的なテレビゲームで遊んだ被験者は、怒り顔の認識に時間がかかること、そしてその影響はゲームを終了した直後だけでなく3カ月後も続いていたことが分かった。
一方、男性成人においてのみ、暴力的なテレビゲームを終了した直後に攻撃性が増加していたが、3カ月後にはゲームで遊ぶ前の水準に戻っていた。また、怒り顔の認識の遅延と攻撃性の変化に相関関係は見られず、それぞれ独立した影響であることも示唆された。
今回の研究で、暴力的なテレビゲームが表情認知に与える影響は長期的である一方で、攻撃性に与える影響は短期的であることが示唆された。ただし、ゲーム専用機だけでなくスマートフォンでも遊ばれるなど、テレビゲームの遊び方が多様化しており、ゲームの暴力描写の内容にも幅があるほか、利用者の年齢や発達段階ごとの影響についての検討も重要であるため、研究チームは、今回の結果の一般化にはさらなる研究が必要としている。
今後は、こうした複数の要因が互いに影響する過程など、さらなる知見を蓄積することで、適切な使用方法やガイドラインの作成に役立つと期待されている。
なお、この内容は9月10日に「Psychology」オンライン版に掲載された。