逆行高DNAがなお色濃く残る旧大証単独上場銘柄に9月相場序盤のダッシュ力を期待=浅妻昭治
2014年9月1日 10:23
<マーケットセンサー>
9月相場である。兜町にとっては、通常なら投資マインドが、ポジティブに改まる下半期の新年度相場入りとなる。しかし、8月後半の変調・ぬかるみ相場が、期待通りに捲土重来、ベースが固まって方向感が定まるかといえば、はなはだ心許ない。8月後半相場と同様に頼みの海外投資家が、東京市場に見向きもしない「ジャパン・パッシング(日本素通り)」の継続懸念は、否定できない。
「ジャパン・パッシング」相場の要因は、3点ほど指摘されている。まず消費税増税のボディーブローである。このところ発表される消費関連の経済指標には、消費マインドの後退を示唆するシグナルが点滅しており、これがさらに深刻化するようだと、来年10月に予定している10%への消費税再増税もおぼつかなくなる。
第2は、「アベノミクス」の成長戦略への失望感である。「第三の矢」が、掛け声ばかりでなかなか飛んでこないのである。第3は、円安進行にもかかわらず日本の輸出が、目立った増加を示さないことにある。この要因分析では、日本の産業構造の変化が指摘されているが、ことによると輸出競争力の劣化、潜在成長力の低下も疑問視され勝ちである。
これだけの懸念材料が揃えば、海外マネーが、日本株のリスクを取ることに二の足を踏むことになるのは当然だろう。はっきり景気回復が進んでいる米国市場への本国回帰や、緊迫化するウクライナ情勢を横目に見ながら、追加金融緩和策が必至な欧州市場へ軸足を移すことは、容易に想定されることになる。
だから9月相場は、この厚い閉塞感に風穴を開けられるかどうかがポイントになるはずである。期待のトップバッターは、9月3日の第二次安倍内閣の内閣改造だ。新閣僚が、次々にアドバルーンをあげて「第三の矢」の前景気を再び盛り上げられるかが注目されることになる。手っ取り早いのは市場に直接、手を突っ込むことで、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用改革などによるPKO(株価維持政策)の発動だ。それでも海外勢の反応が限定的にとどまるなら、切り札は、黒田日銀の「戦力の遂次投入」で、「異次元緩和策の異次元追加策」となるに違いない。
ところが間が悪いことに、安倍内閣の内閣改造を前に米国のニューヨーク市場は、3連休である。ということは、東京市場は、月初商いの1~2日には日米の重要経済指標の発表を控えながらも自助努力で相場の方向性を導き出さなくてはならないことになる。リスク・テイクなのか、リスク・オフなのか、判断は至難の技で東京市場の底力が試される。
前説がまたまた長くなって申訳ないが、そこで注目したいのが、逆行高のDNAがいまだに色濃く残っている旧大証単独上場銘柄である。相場が上放れても、自らの底力で追随し、下放れても、それこそ逆行高のDNAが輝きを増すと予想されるからである。
この旧大証単独銘柄は、昨年7月の現物市場の東証統合で東証銘柄となりちょうど1年を経過したところである。1部銘柄が37銘柄、2部銘柄が162銘柄、さらにジャスダック市場銘柄を含めて1099銘柄が東証銘柄に市場変更され、いわば「地方区」から「全国区」へレベルアップした。株価的にも、株価指数組み入れによる需給好転要因と知名度・プレゼンス向上から水準訂正する銘柄が多数にのぼり、1年経過の今年に入り、昨年高値をさらに更新する銘柄も多い。
ロシアへの経済制裁関連の六甲バター <2266> 、地熱発電事業参入の神戸物産 <3038> 、大規模災害の復旧需要関連の西尾レントオール <9699> などが、この代表で、2部株でも燃料電池車関連の加治テック <6391> (東2)、太陽光発電関連の田淵電機 <6624> (東2)などが、逆行高DNAを刺激される材料株特性を発揮している。
ただ旧大証単独上場銘柄は、なお「地方区」から「全国区」への移行途上でまだ低PER・PBR評価に甘んじている銘柄も多いのである。旧大証第1部上場の37銘柄からも、9月相場序盤でダッシュ力を発揮し活躍が期待できる有望銘柄が浮上してくると想定される。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)