微量の血液から直接遺伝子型の判定が可能に
2014年8月31日 21:51
近年では、遺伝子型に基づき、最適な医薬品の選択や投与量の調節、発症の予防をそれぞれの人に合わせて行う個別化医療の臨床研究が進んでいる。そして、対象となる患者の数や遺伝子の数も増加している。また、複数の遺伝子を組み合わせることや新規遺伝子を追加して判定することも必要となるため、様々な応用にも柔軟に対応できるシステムを導入し、自分たちのラボで遺伝子型判定を行いたいというニーズが高まっている。
このような背景の下、島津製作所<7701>は27日、遺伝子と薬効、疾患の関連性を研究する際に行う遺伝子型の判定を、微量の血液から迅速に行うことができる遺伝子型判定システム「GTS-7000」(研究用)を発売した。価格は611万5200円(PC別、解析ソフトウェア・試薬キット測定48回分を含む、税別)。試薬キットは11万5200円(測定回数48回、税別)。
遺伝子は野生型と変異型に大別され、両親からどちらを受け継ぐかにより、子供は、野生型/野生型、野生型/変異型、変異型/変異型の3つのタイプの遺伝子型のいずれかを持つ。医薬品の効き具合や疾患のかかりやすさに関与する遺伝子が次々と報告されているが、遺伝子型によってその程度が異なるため、あらかじめいずれの遺伝子型であるのか確認することで、より副作用が少なく、効果の高い医薬品を投薬前に選択できるようになることが期待されている。
遺伝子型判定システム「GTS-7000」は、最大96検体を一度に分析できる高速サーマルサイクラーと遺伝子型判定に特化した解析ソフトウェア、確認したい遺伝子をユーザーが設定できる試薬キットから構成される。遺伝子型は、専用解析ソフトウェアによって自動で判定され、96検体分の分析データと遺伝子型が1画面内に個別表示されるため、ひと目で結果の確認が行える。
試薬は、同社独自の血液直接PCR(ポリメラーゼ連鎖反応:DNAの特定の領域を選択的に増幅させる方法)技術を応用しており、血液からのDNA精製作業が必要な従来法と比較し、装置にかけるまでに要する作業時間を30分から5分程度に短縮。また、分析に必要な血液量はわずか1μLと微量であるため、乳幼児や高齢者のように、通常の採血が難しい患者に与える負担も低減できる。各人に適切な治療を行うことを目的とする個別化医療の研究現場において、多検体の遺伝子型も、迅速かつ容易な判定ができるという。
今後は、医薬品の効果や投薬量予測を事前に行うための薬物代謝酵素の遺伝子型判定に用いる検査キットのラインナップ拡充を図る。また、島津製作所の質量分析装置を利用した投薬量を最適に管理するための高感度体内濃度モニタリング法と連携し、投薬治療に必要な診療情報を統合的に管理できる環境を整える方針だ。(編集担当:慶尾六郎)