農業ビジネス拡大 カギは耕作放棄地の再生
2014年8月31日 21:50
農林水産省の統計では2010年の耕作放棄地の面積は40万ヘクタールにおよぶ。同時期の耕地面積は459.3万ヘクタール。耕作地の8.7%におよぶ広大な面積の耕作放棄地が日本にはあるのだ。その面積は増え続け、この10年間で15%以上増えている。農業に関心を示す企業は多く、耕作放棄地はその受け皿になる可能性がある。ただ、企業は農地を借りることはできるが所有はできない。農地の売買や貸借には地域の農業委員会の許可が必要で、農業ビジネス拡大の妨げになっているとの指摘もある。
企業が耕作放棄地を活用して農業ビジネスを拡大する動きが広がっている。作物を栽培しながら太陽光発電もする「ソーラーシェアリング」により売電収入も得ることで、安定経営につなげる例もある。農地で太陽光発電をするソーラーシェアリングは13年3月、農林水産省の規制緩和で可能になった。
産地直送野菜の生産・販売を手掛けるファームドゥ(前橋市)とカネコ種苗<1376>、日立システムズは15年春をめどに、群馬県高崎市内の耕作放棄地約13ヘクタールで、太陽光発電パネルを備えた大規模農地を整備する計画だ。小松菜や水菜、ニラなど葉物野菜の生産に、発電した電気を電力会社に売る収入を組み合わせることで安定収入を得ることができる。
こうした政策は農業ビジネスの安定収入の一助となるが、それでもなお大きな問題がある。農家が「土地を売りたがらない」ことが農地の有効利用を阻む要因となっている。国は農地集積バンクで、こうした状況を打開しようと目論んでいる。貸し手と借り手が相対で契約するのではなく、機構が間に入って仲介する。これで貸し手は所有権はそのままに「安心感」のある公的な機関に農地を貸せるし、借り手はまとまった広さの土地を借りやすくなる。
農業の担い手を増やし、日本の農業の競争力を高めるには、企業による耕作放棄地の活用が不可欠だ。これまで日本の農業の常識とされてきた法律や、流通形態を見直すことは当然だが、企業がまとまった農地を利用でき、安定的な収益を得られる勝算が無ければ、日本の農業は変わらない。(編集担当:久保田雄城)