阪大など、学習能力の発達に関わるタンパク質を発見
2014年8月31日 22:12
大阪大学の橋本亮太准教授らによる研究グループは、「αキメリン」というタンパク質が学習能力の発達に関わっていることを明らかにした。
ヒトの脳には、1000億以上の神経細胞(ニューロン)があり、記憶・学習・思考・判断・言語といった機能を果たしているが、どのような物質が神経回路に関与するのかは分かっていなかった。
今回の研究では、「αキメリン」というタンパク質に注目し、このタンパク質が脳の機能にどのような影響を与えているかを調べた。αキメリンにはα1型(α1キメリン)とα2型(α2キメリン)があるが、それらの遺伝子をさまざまに改変したマウスを作り、行動実験を行った。
その結果、両方のタイプのαキメリンがまったく働かないマウスは、正常マウスの20倍も活発に活動することが分かった。また、このマウスはおとなになってからの学習能力が高いことが明らかになった。α1型だけを働かなくしたマウスや、おとなになってから両方のタイプが働かないマウスの学習は正常であったことから、学習能力には、成長期におけるα2キメリンのはたらきが鍵であることも分かった。
一方で、健康な人を対象に「αキメリン遺伝子のタイプ(多型:SNPs)」と人格や能力などとの関係を調べた。すると、α2キメリン遺伝子のすぐ近くにある「ある塩基」が「特定の型」の人では、性格や気質に一定の傾向がみられ、計算能力が高いことが明らかになった。
これらの結果は、αキメリンが「活動量、学習機能といった幅広い脳機能の制御を担っていること」、「成長期でのはたらきが、おとなになってからの学習機能に影響すること」、「ヒトの脳機能の個人差に関与すること」などを示唆しており、ヒトの学習障害や精神疾患との関連の検証、これらの病気のメカニズム解明などに役立つと期待できる。
研究チームは、特に成長期にα2型が働くことが、おとなになってからの学習能力に影響すると示された点は、極めてインパクトの大きい成果としている。今後の研究の進展によって、自閉症スペクトラムなど発達障害のメカニズム解明や健常な子どもの脳の発達の理解が進むことも期待されるという。