政治家に訊く:馬淵澄夫民主党衆議院議員(3)「民主党は『労働者のための政党』であるべきだ」
2014年8月28日 20:22
【8月28日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
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「歴史的な敗戦」となった第46回総選挙からまもなく2年が経つ。「二度と民主党が政権を取る日は来ない」、「党名変更以外に再生の道はない」とまで言われたが、ここにきて、若干その雰囲気は変わりつつある。そこでSFNは、民主党選挙対策委員長の馬淵澄夫衆議院議員に、3回にわたりインタビューを行った。今回は最終回である。
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■再分配政策の肝はマミー・プロブレム
横田 民主党の勝機を握る鍵とも言える政策「マミー・プロプレム」について、詳しくお聞きしたい。馬淵さんは、前回インタビュー成熟成長時代には再分配の仕組みを再構築の中で、日本経済を立て直す再分配政策の肝に「マミー・プロブレム」を挙げていらっしゃいました。
馬淵 私のマミー・プロブレムの定義は、前回も少し触れさせていただきましたが、まずは「女性が働く環境」の改善が必要だと考えています。
小さなお子さんを抱えて、旦那さんも若くて、奥さんも非正規雇用に近いような環境だと、家族全体の所得も低くなりがちです。実際、若い夫婦から話を聞いてみると、若年層が抱える焦燥感を強く感じます。
女性の労働環境改善を本気でやらないといけない。安倍政権も力を入れているのでしょうが、まだまだ甘いと感じています。
例えば、安倍政権は「3年育休」の推進を掲げていますが、実際に育休が取得できる人は経済的に余裕がある正社員などに限られ、非正規雇用にある人への配慮が不足しています。また、女性の就業率向上という量的な側面に議論が集中し、質的な意味での女性の活躍支援、すなわち女性のキャリア形成への配慮が欠けている。女性が子育てとキャリア形成を両立していくためには、女性に育児の負担が集中している構造を変えること、すなわち、男性の育児シェアが重要です。そのためには、「3年育休」だけでなく、男性、女性ともに活用できる「3年時短」制度もオプションとして提示すべきです。
若い世代は、大方の場合、夫の給与だけではやっていけないと将来に対する不安を抱えている。だから、親に預けるなどして、働きに出る。親に預けられる環境にあれば良いけれど、実家が遠くにあれば不可能です。
今、若いお母さんたちの間で「預かりっ子」が流行していますが、政府としても、このような取組みを支援していく必要があるでしょう。
民主党が再び政権目指すのであれば、こうした女性の立場に立った労働環境改善を考えなくてはいけないし、必要であれば、立法化して国会に提出していかなければならない。
■民主党は男性優位?
横田 お言葉ですが、ここ10年ほど民主党を取材していて私は「男性優位的な政党」という印象を抱いています。まず、女性の候補者や国会議員の数が圧倒的に少ない。野党から出馬しようという志を持った女性を探すのは難しいことは理解していますが・・・。
馬淵 なかなか厳しいご指摘ですが、女性人材の活用という点において、我々はこれまで以上に真剣に考えなくてはいけないと思っています。
官僚出身がいいというわけではないですが、例えば、元官僚の女性も、与野党問わずまだまだ少ない。民主党では、愛知7区で頑張っている山尾志桜里前議員は、元検事という経歴ですが、霞が関出身というと彼女ぐらいかもしれない。
09年の政権交代直後の時を振り返れば、キャリアの女性候補が出馬しやすい土壌があったはずなのですが・・。官僚機構という究極の組織の中で、ある程度キャリアを積んだ若い女性に民主党が魅力を感じてもらえるかどうかは今後の課題でしょう。
ただ、民主党を選んでもらう時に重要なのは、その「志望動機」です。
単に「自民党が嫌だ」ではなく、民主党の掲げる再分配政策をしっかりと理解した上で、入ってきてもらわないと困る。
私は、民主党は「労働者のための政党」であるべきだと思う。富が富を生み出すエスタブリッシュメントとは違う、労働者層が我々の支持基盤であり、彼らのための政策を考え、実行していく。
■民主党は「労働者のための政党」であるべき
「労働者の党」というと、「労働組合の党」と誤解されがちですが、本来、「働く」ということは、老若男女問わず、だれにでも関係することであり、「労働者」という言葉は、もっと普遍的な政治課題です。民主党は、単に労働組合のための政党というのではなく、国民一人ひとりが関心を持つ「働く」ことに焦点をあてる政党であるべきと考えます。
民主党が「労働者の党」となることで、今後、アメリカやイギリス型の二大政党になっていくことも考えられます。それでこそ、日本に、真の二大政党制が出来上がるはずです。
ただ、民主党が二大政党の一翼となるような国民の声の大きな受け皿となるためには、党が一つにまとまる必要があります。かつて「烏合の衆」という批判もありましたが、私は希望を捨てていません。
政党というのは、選挙でまとまる。選挙において、有権者に選択肢を提示することこそが、政党の存在理由であり、選挙は、政治家が持つ政策、政局----ありとあらゆるものの結晶の場になります。私は、政党のマネージメントは、選挙でしか出来ないと思っています。選挙こそが、党の政策を育て、組織を強くする。政党は選挙に育てられるのです。
■来年の統一地方選が最大のメルクマール
横田 馬淵さんはインタビュー中、一貫して、来年の統一地方選挙が、民主党にとって最大のメルクマールになると仰っています。統一での目標はどのくらいと踏んでいるのでしょう。
馬淵 前回より定数自体が減らされている選挙区もあり、過去との単純比較はできませんが、一つでも多くの議席を取りにいくことには変わりありません。その一方で、当選率、すなわち民主党の候補者のうちどの程度の数の人が当選するかについてもこだわりたい。具体的には、当選率80%を目指したいと考えています。過去の数字を見ると、2011年が58%で10人に5人が当選。07年は76%です。
2011年の選挙は、定員が複数の選挙区に、複数の候補者を擁立することが徹底されたため、当選率は低くなっています。これを教訓にすれば、選挙区の事情を無視した複数擁立による共倒れは避けなければならない。しかし、当選率を重視して候補者を絞り、結果、獲得議席を減らしたのでは意味がない。共倒れのリスクを避けつつ、選挙区の事情を踏まえ最適な数の候補者を立てていく。まさに、選対委員長としての腕の見せ所です。
民主党が掲げる生活者目線の政策は、地方でこそニーズが高い。生活に密着した、「マミー・プロブレム」のような政策を年内にパッケージとしてまとめていきたいと思います。(聞き手・SFN編集長 横田由美子)【了】
まぶち・すみお/民主党衆議院議員
1960年、奈良県奈良市出身。横浜国立大学工学部土木工学科卒。上場企業役員を経て、2003年、衆議院議員初当選(奈良1区)。現在4期目。内閣総理大臣補佐官、国土交通大臣・内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)などを歴任。現在、民主党選挙対策委員長。著書に「原発と政治のリアリズム」(新潮新書)がある。HPにhttp://mabuti.net、公式FaceBookにhttps://www.facebook.com/sumio.mabuchiがある。