【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】安倍内閣改造に向けて政策関連材料視を期待だが、次週の重要イベントに向けて様子見

2014年8月24日 17:53

(8月25~29日)

■地政学リスクの再燃や日経平均株価9連騰の反動も警戒

 来週8月25日~29日の株式・為替相場は材料難で方向感に欠ける展開を想定する。9月の安倍内閣改造に向けて政策関連材料視を期待だが、週後半に日本の主要経済指標が相次ぐうえに、次週後半に重要イベントとなる日銀金融政策決定会合、ECB(欧州中央銀行)理事会、米8月雇用統計を控えているため様子見ムードを強める可能性があるだろう。ウクライナ情勢など地政学リスクの再燃、そして日経平均株価9連騰の反動に対する警戒も必要になり、常識的には一服局面だろう。

 前週8月18日~22日の日本株は大幅に上昇し、外国為替市場ではドル買いの動きを強めた。日経平均株価は8月11日から21日まで9連騰となって21日の取引時間中に1万5600円台を回復する場面があり、7月31日から8月8日までの下落分をほぼ取り戻した。ただし日経平均株価9連騰とはいえ、東証1部市場の売買代金は2兆円割れ水準で盛り上がりに欠ける状況だ。8月8日の急落に対するリバウンドに加えて、米国株高・ドル高の流れに乗った形だが、国内要因による本格上昇とは言い難い。

 外国為替市場では、地政学リスクに対する警戒感が和らいだことに加えて、20日公表の米FOMC(連邦公開市場委員会)7月29日~30日開催分議事要旨で早期利上げ観測が浮上してドル買いの動きを強めた。そして22日の米国時間にはジャクソンホール金融・経済シンポジウムで、イエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長が「労働市場の回復が想定より早ければ利上げが前倒しになる可能性もある」と述べたことで、ドル・円相場は1ドル=104円20銭までドル高・円安方向に傾く場面があった。

 ただしイエレン米FRB議長の発言にサプライズはなく、その後は米国株も為替も全体として動意に乏しい展開となり、結果的にイエレン米FRB議長の講演は波乱なく通過の形となった。そして22日の米国株はウクライナ情勢を警戒する動きもあり、ダウ工業株30種平均株価とS&P500株価指数は下落、ナスダック総合株価指数は上昇と、主要株価指数は高安まちまちで終了した。外国為替市場でドル・円相場は1ドル=103円90銭近辺、ユーロ・円相場は1ユーロ=137円60銭近辺で終了した。CME日経225先物9月限(円建て)は1万5550円だった。

 このため週初25日の日本市場はやや慎重なスタートとなり、その後も材料難で様子見ムードを強める展開となりそうだ。日経平均株価は7月31日の取引時間中の戻り高値1万5759円66銭の突破が当面の焦点となるが、常識的には9連騰後の一服局面であり、一時的に上抜く場面があったとしても上値追いはやや疑問だ。ウクライナ情勢やイラク情勢といった地政学リスクが予断を許さない状況であることに変化はなく、情勢悪化の報道に敏感に反応する可能性もあるだろう。

 また22日のイエレン米FRB議長の講演を受けて、米FRBのゼロ金利解除時期は労働市場の回復次第との見方が一段と優勢になった。このため次週9月5日の米8月雇用統計が注目されることになる。また4~6月期実質GDP成長率を受けて、日本では日銀による追加緩和観測が再浮上し、ユーロ圏ではECBによる追加利下げや量的緩和導入に対する観測が強まっている。このため次週9月3日~4日の日銀金融政策決定会合と4日の黒田日銀総裁の記者会見、4日のECB理事会とドラギECB総裁の記者会見が注目されることになる。

 国内要因としては週末29日に7月全国消費者物価指数など主要経済指標の発表が相次ぐ。そして9月の安倍内閣改造と臨時国会に向けて政策関連も材料視されそうだ。個人投資家の資金があらためてゲーム・ネット関連、ロボット関連、自動運転関連、格安スマホ関連、新燃料関連、バイオ関連といった新興市場主力株に向かうかも焦点だ。ただし一方では日経平均株価9連騰の反動に対する警戒が必要だろう。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革は引き続き支援材料だが、賞味期限切れが警戒される。政策に対する期待や督促が波乱要因となる可能性にも注意が必要だろう。

 為替については、地政学リスクに対する過度な警戒感が和らぎ、米FOMC議事要旨やイエレン米FRB議長の講演を受けてドル買いの動きを強めたが、米10年債利回りが急速に上昇したわけではなく、概ね2.4%近辺での推移にとどまっている。米金利上昇に伴うドル高・円安進行という中期シナリオに大きな変化はないが、当面は米10年債利回りが上昇しない状況であり、一本調子にドル高・円安が進行するとは想定し難い。地政学リスクに対する警戒感やECBの量的緩和導入観測を強める可能性もあり、ドル・円相場は1ドル=103円台~104円台、ユーロ・円相場は1ユーロ=136円台~138円台での推移だろう。

 その他の注目スケジュールとしては、25日の独8月IFO業況指数、米7月新築一戸建て住宅販売件数、米7月シカゴ連銀全米活動指数、米8月総合・サービス部門PMI速報値、26日の日本7月企業向けサービス価格指数、米6月FHFA住宅価格指数、米6月S&Pケース・シラー住宅価格指数、米7月耐久財受注、米8月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数、27日のトルコ中銀金融政策決定会合、独9月GfK消費者信頼感指数、28日のユーロ圏8月景況感・業況感指数、米7月中古住宅販売仮契約指数、米4~6月期GDP改定値、29日のJPX日経400定期銘柄入替実施、日本7月完全失業率・有効求人倍率、日本7月家計調査、日本7月鉱工業生産速報、日本7月商業販売統計、日本7月住宅着工戸数、日本7月全国・8月東京都区部消費者物価指数、インド4~6月期GDP、ユーロ圏8月消費者物価指数速報値、米7月個人所得・消費支出、米8月シカゴ地区購買部協会景気指数、ブラジル4~6月期GDPなどがあるだろう。

 その後は、9月2日の豪中銀理事会、2日~3日のブラジル中銀金融政策会合、3日~4日の日銀金融政策決定会合、英中銀金融政策委員会、4日のECB理事会と記者会見、5日の米8月雇用統計、8日の日本4~6月期GDP2次速報、11日のインドネシア中銀金融政策決定会合、16日~17日の米FOMCと記者会見、20日~21日のG20財務相・中央銀行総裁会議、26日の米4~6月期GDP確報値などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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