存在感増す第一生命 物言わぬ株主からの変貌

2014年8月23日 20:44

 生保は国内上場企業の発行済み株式の4%にあたる株式を保有している。事業の成長を考える上で、経営の安定化は不可欠であり、安定株主としての生保の意義は大きかった。しかし、「物言わぬ株主」と言われてきた生保の姿勢に変化が生じている。株主総会での議決権行使によって投資先への経営関与を強めている。第一生命保険<8750>は大手生保で初めて、投資先の上場企業の議案にどう賛否を投じたかを公表することを決めた。18兆円もの株式を保有する生保が投資先の剰余金処分などの監視を強めれば、企業に増配などを促すきっかけとなりそうだ。

 生保が「物言う株主」に転じ始めた契機は、機関投資家の行動規範を定めた「日本版スチュワードシップ・コード」の導入だ。2月に金融庁が指針をまとめ、大手生保が一斉に導入を表明した。これまでも生保は取締役選任などの議案に賛成するか否認するかの内部基準があったが、議案の賛否数などはほとんど公表していなかった。生保の株式保有は資産運用の面だけでなく、保険商品を投資先に売るための「営業ツール」としての側面もあったためだ。

 生保が取締役の選任などで議決権を行使すれば企業への影響は大きい。例えば第一生命は今年から、在任12年を超す監査役の再任には反対票を投じることにした。取締役会のなれ合いを防ぐためだ。ほかにも経営状態の悪い企業が買収防衛策を導入しようとすれば、これにも反対票を投じる。今年の株主総会では投資先の約2000社の議案のうち10%弱に反対したという。8月末にはさらに「取締役の選任」「剰余金の処分案」など議案ごとの賛否数を公表し、企業に経営改善を働きかける。生保は国債の利回り低迷で運用実績が伸び悩む。保有株の投資価値を高める必要があるためだ。日本生命保険なども賛否数の公表まで踏み込まないが、投資先への経営関与に舵を切る方針だ。

 第一生命は他の生保に先駆け、いちはやく株式会社化を果たした。株式市場から資金調達、経営戦略の柔軟化など様々なメリットがあるが、市場の目にさらすことによって経営の透明性が高まり、経営内容のディスクロージャーの充実も期待できるようになった。生保全体にこうした動きが広まれば、これまで日本を支配してきた、企業間の相互依存(馴れ合い)の関係が大きく変わる可能性がある。(編集担当:久保田雄城)

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