政治家に訊く:馬淵澄夫民主党衆議院議員(2)「成熟成長の時代には再分配の仕組みを再構築」
2014年8月21日 16:29
【8月21日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
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「歴史的な敗戦」となった第46回総選挙からまもなく2年が経つ。「二度と民主党が政権を取る日は来ない」、「党名変更以外に再生の道はない」とまで言われたが、ここにきて、若干その雰囲気は変わりつつある。そこでSFNは、民主党選挙対策委員長の馬淵澄夫衆議院議員に、3回にわたりインタビューを行った。今回は、第2回目だ。
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■民主党再生の鍵は
横田 前回お話いただいた「与党の支持率は必ず下がる」(http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20140814_4)の中で、「民主党再生の鍵」は生活に密着した課題に正面から向き合うということでした。具体的にお聞かせいただけますか。
馬淵 やはり社会保障政策です。いわゆる、「年金」、「医療」、「介護」、「子育て支援」の四分野が主軸になります。社会保障を強調すると、何となく公的支援重視、経済成長軽視のイメージあると思いますが、それは違います。
経済成長を否定するような政党が政権につくことは、もはやありません。安倍政権が打ち出した成長戦略は、民主党政権時代の焼き写しであり、中身は変わりません。また、外交や安全保障上の即応的危機対応も、大きく変わるものであってはならない。
では、自民党との違いは何か。
自民党と民主党との最大の違いは社会保障をはじめとした「再分配政策」です。経済の成長を是としながらも、成熟成長時代に即した方策として、経済成長により得た果実については再分配をしっかりと行うことに重きを置くのが民主党です。
これに対して、社会的なひずみが生じてでも成長を加速させるため、市場競争の強化に果実を振り向けようとするのが今の自民党です。
自民党は「高度成長経済時代の政権与党」から未だ抜けきれていない。高度成長時代には、再分配をことさら気にしなくても、国民所得は上がっていたので、問題はなかったのです。
■成熟成長の時代の中で・・
しかし、少子高齢化やグローバル化が進んでいく中、今や、日本は、成熟成長の時代にあります。
成熟成長の時代の中で、社会のひずみを補正しながら、どう日本経済を前に進めるか。今こそ、「再分配の仕組み」を再構築して国民の皆さんに提示しなくてはならない。
私は、再分配政策の肝は、子育て中のお母さんが直面する問題、言うなれば「マミー・プロブレム」とでも呼べる問題にあると思っています。
アメリカでも大統領選挙の度に課題になるイシューです。
「マミー・プロブレム」は、現在子育て中のお母さんだけでなく、子育てに取り組むお父さん、さらには、将来結婚して家族を持とうとする若年層にとっても共通の課題です。その意味で、子育て支援策はもちろん、医療や若年者雇用の問題とも関係します。また、女性が働く環境の改善や、いわゆる「M字カーブ」に関する問題も本気で
取り組まなければならない課題です。
若年層は、男女を問わず、非正規雇用が多く、生活に不安を抱えています。
■勝機はスウィング層をつかまえられるかどうか
そして、今後の長い人生をどうしたらいいのかと漠然とした不安や焦燥感を抱いている。この層が、いわゆる、選挙を左右する「スイング層」です。
彼らが抱える不安や焦燥感に応え、彼らをがっちりとつかまえられるような魅力ある政策を打ち出せなければ、民主党は勝てない。勝機のひとつとして、自民党が置き去りにしている「マミー・プロブレム」があると考えています。
それから、民主党がやらなくてはいけない一丁目一番地の政策は、やはり年金改革です。
横田 お言葉ですが、年金問題を批判して民主党は政権をとりましたが、結局、何もできなかったという印象が強いです。むしろ政権交代後は、「年金問題」が民主党政権の信頼失墜の原因になった感すらあります。
■政権党の経験を踏まえて年金改革をブラッシュアップ
馬淵 言い訳に聞こえるかもしれませんが、09年の政権交代前、野党の立場にあった我々は十分な情報を持っていなかった。政権与党になって、行政機関が持つ情報をもとに検討を進めてくと、「一元化への移行に40年もかかる」等の課題があるということがわかった。
09年の我々の年金政策は、現実的、具体的な道筋が欠けていたという点は否定しません。しかし、非正規雇用が増え、高齢者の貧困が問題となる中、「一元化」と「最低保障」の二本柱を掲げた改革の方向性自体は決して間違っていない。
また、今なら、3年3ヶ月の政権の経験を踏まえて、これまでの案をブラッシュアップし、より現実的な案を出せます。
一案として、「年金一元化」と「最低保障機能の強化」の方向性を維持しつつ、若年層と子育て世代の支援にターゲットを定めた現実的な年金改革案(馬淵私案)を党内の検討会議に提出しました。
内容については、年金改革試案(http://mabuti.net/wpsite/wp-content/uploads/2014/03/aa9d50cdd0484e6d9cf2bf5b08cf6f38.pdf)をHPに出しているので、ご興味のある方は是非ご覧いただければと思います。
横田 話は変わりますが、任期満了に伴う福島県知事選(10月9日告示、26日投開票)で、元日銀福島支店長の鈴村健氏が出馬表明をしました。2011年6月以降、内閣官房審議官や復興庁政策参与として震災復興の業務に当たったとのこと。
現職の佐藤雄平知事は、出馬するか否かを明らかにしていません。福島では、かなり民主党は有利なはずですが。
馬淵 福島知事選について、現時点でコメントすることは難しいですが、一つ言えることは、福島は被災地であり、復興の真っただ中にあるということです。首長選は、ともすれば党派間の対立になりがちですが、住民はそのような争いを望んでいない。
政党間の争いではなく、様々な意見の対立を乗り越えておさめられる人材、そして何よりも被災した人々に寄り添うことができる人材が強く求められます。
横田 わかりました。次回は「マミー・プロブレム」を含めた女性政策だけでなく、女性候補者などについてもお聞きしていきたいと思います。(聞き手・SFN編集長 横田由美子)【了】
まぶち・すみお/民主党衆議院議員?1960年、奈良県奈良市出身。横浜国立大学工学部土木工学科卒。上場企業役員を経て、2003年、衆議院議員初当選(奈良1区)。現在4期目。内閣総理大臣補佐官、国土交通大臣・内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)などを歴任。現在、民主党選挙対策委員長。著書に「原発と政治のリアリズム」(新潮新書)がある。HPにhttp://mabuti.net、公式FaceBookにhttps://www.facebook.com/sumio.mabuchiがある。