ふるさと納税が簡略化・控除額もアップ 離れていてもできる地方貢献

2014年8月18日 10:21

 政府は地方活性化策の柱の1つとして、現居住地以外の自治体に寄付を行うことで所得税や現居住地での住民税が軽減される「ふるさと納税」ついて、手続きの簡略化や控除の上限を2倍にするなどの方針を発表した。より多くの人に「ふるさと納税」を利用してもらい、地方の活性化につなげる狙いだ。

 生まれ故郷だけでなく、応援したい自治体など日本全国のあらゆる自治体に寄付が可能な「ふるさと納税」。寄付を行えば、間接的に居住している自治体で減税されるシステムだ。遠く離れていても故郷に貢献できる仕組みが、これまでも注目を集めてきた。

 また、寄付金に応じて地元の特産品などのお礼品を贈る自治体も多く、これを目当てにゆかりのない地域でも寄付を行っている人も多い。自治体側も地元アピールのチャンスとして力を入れている。他には、東日本大震災からの復興を後押しするため、東北の自治体に積極的に寄付している例もあるようだ。

 政府によると今後の変更点は、まず減税対象が住民税に一本化される。これにより所得税の還付がなくなるため、確定申告が不要になり手続きが簡略化される見通しだ。これまで確定申告時の煩雑さから寄付を敬遠していた人も多く、利用者増加が見込まれる。

 もう1つは、税金控除を受けられる寄付金額の上限アップだ。これまでは所得税の一定額と住民税の所得割額の1割が上限とされていたが、今回の変更で、住民税の所得割額の2割まで引き上げられる。利用者の所得により違いはあるものの、最大で控除額はこれまでの約2倍となる。これらの変更は来年度から行われる予定だ。

 地方自治体としては、これを機会に地元アピールや観光誘致につなげたいという思いもあるだろう。しかし一方で、東京都心など地方出身者の多い都市部から、「地域サービスを受けているのだから居住地に納税してほしい」と不満の声があがるのではないかとも危惧されている。ただ、元々都市部と地方の税収格差を埋めるために作られた取組みであるため、地方活性化を考えると今回の変化は妥当な範囲ではないだろうか。

 景気回復という意味だけでなく、働き方などライフスタイルの面でも、東京一極型の社会システムからの脱却とそのための地方活性化が叫ばれて久しい。しかしそれは、ただ地方が経済的に発展すれば良いという話ではなく、そこに住む人々の気質や周囲の自然環境、町のサイズに合わせた地域の存続の仕方をそれぞれに見出すことではないだろうか。「ふるさと納税」の拡大が、故郷を遠く離れた人にもそうしたことを考えるきっかけになれば、と思う。

 ちょうどお盆の季節で帰省した方も多いだろう。育った土地に思いを馳せつつ、地元の取組みや「ふるさと納税」について調べてみてはどうだろうか。(編集:久保田雄城)

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