ソフトバンクだけじゃない 大型買収の破談が相次ぐ米企業

2014年8月17日 20:44

 ソフトバンク<9984>子会社で米携帯電話3位のスプリントが、同4位のTモバイルUSの買収に向けて進めてきた交渉が白紙に戻った。米国市場で7割を握る上位2社に対抗するには、統合による「強い3位」の形成が不可欠との認識で双方が一致していた。だが、米規制当局の承認を得られるメドが立たず、破談リスクを巡り当事者間で折り合えなかった。

 大型買収の破談はこれだけではない。メディア王で知られるリチャード・マードック氏は21世紀フォックスによる同業のタイムワーナーへの買収提案を撤回した事を明らかにした。また米製薬大手ファイザーによる英アストラゼネカ買収計画は、今年不成立となった案件で、買収提示額が最も大きいものだった。

 企業買収の考え方のポイントは「少ないリスクで時間を買える」ことだ。すなわち、「必要な顧客、販売拠点、人材、ノウハウなどを一括して取得できる」手段なのだ。この方法は収益がすぐに見込め、ゼロから事業を立ち上げる場合と比較して、時間とリスクがはるかに少なくてすむといえる。ウオール街では買収や合併などのM&Aで規模が大きくなるのは米企業の成長の原動力であると言われてきた。日本においても日本電産<6594>が企業成長の原動力としてM&Aを戦略的に活用していることで有名だ。

 では、なぜ米国で大型の企業買収の破談が相次いでいるのか。実はスプリントによるTモバイル買収に反対していたのは米連邦通信委員会だった。M&Aで企業の数が減り、「市場の競争が損なわれる」と懸念したためで、当局は買収断念を歓迎すると異例のコメントを出している。

 21世紀フォックス、スプリント、ファイザー、いずれの案件にもアドバイザーを務める投資銀行としてJPモルガン・チェースが関与していた。JPモルガンは現在、米国および世界のアドバイザー・ランキングで、ゴールドマン・サックス・グループとモルガン・スタンレーを追撃している。21世紀フォックスの買収計画が成立していれば、同社のM&A取扱額は米国で2位に浮上するはずだった。市場の正常な競争が損なわれるほど強力にM&A案件を、まとめ上げていることに対する拒絶反応があるのかも知れない。(編集担当:久保田雄城)

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