新興国外貨準備の膨張は通貨攻防戦の副産物
2014年8月14日 11:14
通貨高は自国企業の輸出の妨げとなる。どの国も自国通貨高を望んでいない。自国通貨を安定させるため、そして安くするために各国は通貨攻防戦を繰り広げている。特に輸出によって自国産業を発展させたい新興国にとっては自国通貨が高くなり、輸出競争力が損なわれることは深刻な問題だ。経常黒字や先進国から流入する投資マネーで自国通貨高になるのを抑えようとドル買い為替介入を続けた結果、その副産物である新興国の外貨準備が急増し、中国や韓国などで過去最高を更新している。
外貨準備をめぐるマネーの流れはこうだ。米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和を終えた後も低金利政策を長く続けるとの見方を強めている。日欧も緩和的な金融政策を取っており、投資家は少しでも高い利回りを求めて資金を新興国の債券や株式に振り向けている。先進国から資金が流入する新興国の通貨には上昇圧力がかかる。自国企業の輸出の妨げとなる通貨高を防ごうと自国通貨売り・ドル買いの為替介入を行う新興国が多い。その結果、新興国側ではドルを中心に外貨準備が積み上がる。
外貨準備は安全で流動性の高い資産で運用するのが一般的で、米国債が代表例だ。新興国の金融市場に投資マネーが流れ込むほど、政府の通貨介入で外貨準備が膨らみ、外貨準備マネーが米国債に還流する仕組みだ。米長期金利は昨年末時点では3%程度にまで上昇していたが、今年初めから低下基調をたどり、足元では2.5%前後で推移。金利低下の背景には新興国の外貨準備の存在がある。そして、投資マネーは再び相対的に金利の高い新興国を目指して循環する。先進国の金利が低下するほど、投資マネーが新興国に向かう循環も働きやすくなる。この循環が繰り返されているのだ。
金利の低下には限度がある。もし、この循環が滞ったときには、そして逆流が生じたときには世界経済が大きな混乱に陥る可能性がある。2013年5月、当時のバーナンキFRB議長が米緩和縮小に言及した直後の6月には324億ドルもの巨額の資金が新興国から流出し、市場が大混乱した。今は再びマネーが先進国から新興国に流れる形で安定しているが、いつまで続くかは不透明だ。新興国の外貨準備から米国債への資金還流が米金利を押し下げ、経済実態と比べ米金利が低くなるゆがみが生じている可能性もある。新興国の通貨攻防戦の副産物が世界経済に大きな副作用を起こす日がやってくるかも知れない。(編集担当:久保田雄城)