りそな国有化にピリオド 金融再編の核となれるか

2014年8月12日 11:13

 2003年4月、日経平均株価は7600円台まで下落し日本経済は満身創痍の状況にあった。「まさか銀行が潰れることはないだろう」誰もがそう信じていたにもかかわらず、多くの銀行は独力では生き残れず、合併相手を探すことに明け暮れていた。そして、同年6月、政府はりそな銀行(現りそなホールディングス<8308>)に公的資金を注入、実質国有化するに至った。

 あれから11年、りそなはこれまでに注入を受けた公的資金をほぼ完済し、03年から続いた実質国有体制にピリオドを打とうとしている。国がりそなに注入した公的資金は3兆1280億円。当時の頭取らが退任するなど、経営責任は明確にしたが、株式は上場を維持し株主責任を問わなかった。このりそな型銀行救済はその後の銀行救済のモデルになった。経営破綻させずに公的資金を予防注入した方が国民負担が軽く、市場への影響も小さかったためだ。国は389億円の利益を得て、18年3月末を期限とする完済計画も前倒しが視野に入る。

 りそなの再建役を担ったのはJR東日本<9020>副社長から転身した細谷英二会長(故人)だ。「銀行の常識は世間の非常識」と唱え、サービス改革に着手。預金者向けのサービスを増やし、パート行員の活用などで銀行固有の高コスト体質も改めた。

 大企業取引を重視する3メガ銀行と異なり、個人や中小企業を顧客とするリテール営業に軸足を置くのも特長だ。りそなの貸出金の9割近くは中小企業へ融資や個人向けの住宅ローン。小口融資に資金が分散しているため「経済危機に見舞われても銀行経営が大きく揺らぐことのない体質になった」とりそな幹部は胸を張る。「店舗網や顧客基盤が専業の信託銀行より多い。資産承継分野に優位性がある」と分析するアナリストもいる。

 3メガ銀行とは一線を画した事業モデルは、地方銀行などにも適用できる。折しも金融当局は地銀再編を推し進めている。りそなが他の地銀を吸収し、これまで日本にはなかった大型のリテール銀行となる姿も想定される。国有化にピリオドを打ち、経営の自由度が増すことで、今後の金融再編の核となる可能性もある。(編集担当:久保田雄城)

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