ネット社会の「忘れられる権利」 Googleも対応に苦慮
2014年8月10日 21:18
インターネット上で簡単に世界中の情報が手に入るようになり、SNSなどを通し誰もが自分の日常を世界中に簡単に発信できるようになった。しかしその一方で、そうやって拡散され、半永久的に残り続ける自分の情報をネット上から消してほしいと求める人も増えてきている。
EU(ヨーロッパ連合)は2012年にまとめたデータ保護法改正案の中で、インターネット上の個人に関する情報の削除を求めることができる「忘れられる権利」を盛り込んだ。14年7月までに、実に9万人・32万件にのぼる削除要請が求められているという。14年5月には、EU最高裁は「忘れられる権利」に基づく削除要請を認め、米検索大手Googleに対し「不適切な、意味のない、または、すでに不要となった情報」について削除を命じる判決を出した。
こうした削除要請をめぐり、Googleは7月31日に対応を苦慮している現状を説明している。その理由は、削除判断の難しさだ。情報の確認については、大部分を削除要請者本人に頼るしかなく、虚偽情報や不正確な情報を元にした削除要請や、本人にとって不都合な情報を隠した上での削除要請の可能性なども考えなくてはならない。他にも、同姓同名の赤の他人の情報を誤って消してしまうなどの恐れもある。1件ごとに慎重な判断が必要で、情報の公益性を保つラインの設定に非常に苦しんでいるという。
問題はそれだけではない。現状ではあくまで検索結果から除外されるだけで、ページそのものがネット上から消えるわけではない。中には、削除要請を行ったことでニュースとなり、逆に注目を集めてしまったという皮肉なケースも起きている。
こうした情報社会の権利問題については、もっと日本のマスメディアでも報道を行い、認知されるべきだろう。事実、お隣の韓国ではEUの動きを受け、「忘れられる権利」の法制化の動きも起こっているという。
日本でも、近い将来に「忘れられる権利」が問題となってくることは間違いないだろう。今でも、ネット上でいわゆる「炎上発言」をした人の個人情報がすぐに特定され攻撃を受けたり、またリベンジポルノの拡散などの問題も起きている。日常的なところでは、友人のSNS上で自分も含めた写真が無断でアップされることに戸惑いを覚える人も少なくない。自分の手に負えないところで、情報だけが無限に拡散されていく怖さは日常に存在しているのだ。自分がこの世から消えても、情報だけが幽霊のようにネットの海に残り続ける。そんな趣味の悪いSFのような世界は、とっくに現実になっている。(編集担当:久保田雄城)