相次ぐキャンセルに透けて見えるエアバスの焦りと意地

2014年8月10日 22:40

 国内航空会社3位のスカイマーク<9204>が発注していた超大型旅客機「A380」について、製造元である欧州エアバスが売買契約を解除した。このニュースは大きく取り上げられ、多くの人の関心を集めた。なぜエアバスは契約解除に踏み切ったのか。なぜエアバスは数百億円とも言われる巨額の損害賠償を求めようとしているのか。そもそも、なぜエアバスはリスクを冒してまで中堅のスカイマークとの取引に踏み切ったのか。

 4年前、アラブ首長国連邦(UAE)に本拠地を置くエミレーツ航空が約30機の発注を決めたとき、当時のエアバス首脳は意気揚々としていた。エアバスは、年間平均30機を引き渡すことでA380が遅くとも2015年に損益分岐点に達するとみていた。ところがその後は状況が一転する。11年と13年の納入機数はそれぞれ26機と25機にとどまる。

 13年9月、独ルフトハンザ航空は発注していた3機のA380をキャンセルし、同時期にエアバスの「A350XWB」と米ボーイングの「777」の導入を決めた。インドの新興航空会社キングフィッシャー航空は05年にA380を発注。その後、資金繰りが悪化し12年に事業停止に追い込まれた。エアバスは今年1月になって正式に発注分のキャンセルを決めた。A380はこれまでに約320機の受注を獲得し135機を引き渡したが当初の計画は下回っている。

 7月には世界最大級の航空展示会、ファンボロー国際航空ショーで、エアバスとボーイングが受注合戦を繰り広げていた。エアバスは小型機ではボーイングに先行しているものの、利益率で勝る大型機ではボーイングの後じんを拝している。ボーイングは早くから787や次世代大型旅客機「777X」といった大型機を強化。787はトラブルが続いたものの、現在の受注は1000機を超える。7月上旬にはエミレーツ航空から777Xの150機の受注を勝ち取った。

 エアバスにも意地がある。A380は150億ドル以上を投じて自力開発した自慢の超大型機だ。一度はボーイングに共同開発を持ちかけたが断られた経緯もある。販売現場はA380を売ろうと必死の攻勢をかけ中堅航空会社にも対象を広げた。一連の騒動の背景には、相次ぐA380のキャンセルによる焦りと、エアバスの意地が透けて見える。(編集担当:久保田雄城)

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