為替週間見通し:地政学的リスク増大で円買い優勢、国内GDP大幅マイナスへ

2014年8月9日 20:32


*20:32JST 為替週間見通し:地政学的リスク増大で円買い優勢、国内GDP大幅マイナスへ

■ドル・円弱含み、地政学的リスクの増大を嫌気した円買い優勢

先週のドル・円は弱含み、102円93銭から101円51銭まで下落した。地政学的リスク回避の円買いが優勢となったことが要因。欧米によるロシアへの懲罰的な追加制裁に対して、ロシアが報復措置を打ち出したことやオバマ米大統領がイラクへの限定的空爆を承認したことが、ドル売り圧力を強める結果となった。

ただ、ロシア国防省は8日、「部隊を基地に帰投させる」と発表したことでウクライナ情勢の緊張緩和への期待が浮上し、リスク回避的な円買いは一服。ドルは週末前に102円台に戻した。先週の取引レンジは101円51銭-102円93銭。

■地政学的リスクと日本の4-6月期国内総生産(GDP)に要注目

今週のドル・円は、ウクライナ情勢や中東情勢に警戒しつつ、日本の4-6月期の国内総生産(GDP)速報値に注目する展開となる。ウクライナの紛争激化への懸念はやや後退したが、イラクが内戦に陥った場合、パレスチナ紛争が激化した場合は、リスク回避の円買い圧力が強まることになる。

しかしながら、日米の金融政策の乖離観測や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による外貨建て資産への投資増額期待は維持されており、ドルの下値は限定的と予想される。

■日本の4-6月期国内総生産(GDP)速報値(13日)

日本の4-6月期の国内総生産(GDP)速報値は、前期比年率-7.1%と予想されており、消費増税の影響を受けて1-3月期の+6.7%から大幅に悪化することが見込まれている。2015年10月の消費増税(8%⇒10%)の判断材料は、2014年7-9月期の国内総生産(GDP)となること、日本のインフレ率が上げ渋る展開となっていることで、日本銀行の追加緩和観測が高まることになる。

■中東の地政学的リスク

イラクでは、オバマ米大統領がアルカイダ系の武装組織に対して限定的な空爆を承認したことで、オバマ米政権の中東からの撤退シナリオが逆戻りする可能性、シリアやパレスチナ情勢も絡んで、中東全域での地政学的リスクが高まりつつある。イラクが内戦に陥った場合、原油価格が上昇することで、原発稼動停止で原油輸入の依存度が高い日本経済にはマイナス要因、貿易赤字の拡大により円安要因となる。

■ウクライナ紛争

ポロシェンコ・ウクライナ政権と親ロシア武装勢力との武力衝突は続いている。ロシアによるウクライナ侵攻の可能性は低下したとの見方が広がっているが、ウクライナ情勢については予断を許さない状況が続くことになる。市場関係者の間では、リスク回避の円買いと有事のドル買いの2つのシナリオが想定されているようだ。

主な発表予定は、12日(火):(日)7月国内企業物価指数、14日(木):(日)6月機械受注、15日(金):(米)7月鉱工業生産、(米)7月設備稼働率。

予想レンジ:100円00銭-104円00銭《TN》

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