原発の動かない夏 節電・電力供給の未来について考える

2014年8月3日 19:55

 今年、日本列島は東日本大震災以後初めて、原発稼働ゼロの夏を迎えている。

 多くの国民が原発の安全性を疑問視する中、政府は原発再稼働の方向へ進んでいる。一方で、連日続く猛暑に熱中症で亡くなる方も増え、テレビからは「適切な冷房の使用を!」という声は聞こえても、「節電を!」という声は3年前の夏のようには聞こえなくなった。実際に原発に依存しなくても本当に電力は供給できるのか?節電はどこまで必要なのか?今一度国民みんなが考えるべき時期なのではないだろうか。

 まず、今夏の電力供給の現状についてみてみよう。7月25日には北海道と沖縄を除く全国8つの電力会社で今夏最大の電力需要が記録された。翌日26日には全国各地で37度を超える酷暑となり、今後も最大電力需要量は更新される見通しだ。原発稼働の無い今年、電力供給元はどうなっているかというと、多くの電力会社が老朽化した火力発電所をフル稼働している状況だ。しかし、設備の古い火力発電所では事故が相次いでいる。

 今年3月には九州電力松浦発電所の火力発電用タービンの落下事故が起きた。玄海原発、川内原発が停止している中、この事故で一時は今夏の九州全体への電力供給が危ぶまれる事態となった。九州電力は結局、東京電力から電力を融通してもらう形で夏に向けて電力予備率を確保した。

 こうした火力発電の事故・トラブルは今夏、前年に比べ全国で4倍の数に上っているという。電力各社も点検・整備や増員などの対処を行っているが、正直なところ今夏の電力確保は綱渡り状態だ。松浦発電所のような大規模な事故が、もし電力供給がピークを迎える夏の最中に起これば、「ブラックアウト」と呼ばれる大規模停電にもつながりかねない。理想的な電力予備率は8%、安定供給の最低目安が3%と言われているが、現在8%近くを保っているのは北海道・東北・沖縄電力だけ。一方で関西・九州電力は3%前後で推移していて安心はできない。

 節電についてはどうか。今年政府は昨年と同じ「数値目標を伴わない節電要請」を出した。これは猛暑による熱中症対策などを考えた上での、ギリギリの選択だったようだ。また、企業や家庭にこの3年で節電意識が根付いてきたため、声高に制限を呼びかける必要がなくなってきた側面もあるだろう。しかし、逆に4年目ともなると「節電疲れ」が出るとの指摘もある。大企業を中心に景気が上向いてきているが、それが昨年以上の電力消費につながっている面もあるだろう。

 残念ながら、この先日本の夏は今より暑くなることはあっても、涼しくなることはほぼ無いと言われている。そして、原発再稼働の是非については国全体で議論が続いていくだろう。それらを合わせて考えても、日本の電力使用については、これからの時代よりシビアにならざるを得ない。電力消費を抑え、持続可能な暮らしや経済を考えなくてはならないのだ。

 余談だが、筆者もこの原稿は冷房の無い部屋で窓を全開にして書いた。電力に関わる新しい暮らし方や生き方を、一人一人が自分の足元から見つめ直す夏にしようではないか。(編集担当:久保田雄城)

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