雇用環境改善こそ成長のカギ 果実分配法定も
2014年8月2日 13:59
総務省発表によると、6月の雇用者数(役員を除く)は全国で5260万人。前年同月比で34万人増加した。このうち、36.8%にあたる1936万人が非正規雇用で前年同月比36万人増加した。企業にとっては景気調整労働人口といえるだろう。非正規雇用が雇用者全体の3人に1人の割合を超えている。このまま、非正規雇用が増加すれば所得格差は拡大の一途だろう。
政府は多様な働き方がある、正規雇用でなく、自分にあった一定時間だけ就労したい人もいると説明するが、都合よく、一部を取り上げるのはいかがなものか。正規雇用を希望しながら非正規雇用でしか就労できない人たちが1936万人の中に、どれほどいるのか、そうした数値を把握し、公表してもらいたい。
また常雇いのうち期限付き雇用1054万人、臨時雇い345万人、日雇い67万人と有期雇用は1466万人にのぼっている。これは雇用者全体の27.9%に相当する。4人に1人が期限付きという不安定雇用で、更新時期を迎える毎に雇われ側は不安にかられているのではないか。期限付き雇用の実態を把握し、必要な労働政策を検討していくことが求められる。
あわせて、経済の好循環を目指すとして、復興法人税前倒し廃止や税制優遇など大企業優遇政策は安倍政権発足から2年を経過しようとする中で、大企業とその役員や株主に果実をもたらしているものの、労働者には大手を除き、ほとんど反映できずに推移している。
私は決算における果実のうち、一定割合以上を従業員に還元するよう法定して義務付けなければ形式的還元にしかならないと言ってきた。労働者の実質賃金が前年同月比で4月3.4%減、5月3.8%減、6月も3.8%減と3%を超え落ち込んでいる実態をみてもうかがえる。消費税の引き上げ要因だけではないだろう。政府はこの法定について政労使代表会合の場で真剣に議論していくべき。景気の好循環を早期実現するには勤労者の可処分所得の引き上げを実現させる担保措置が必要だ。
経営者そのものが被雇用者になっている状況では景気の好循環による果実は株主総会で自らのポストを保守するため株主配当への比率が高くなる。ついで役員報酬、内部留保、最後に従業員のモチベーションを保つための原資になると思われる。従業員を家族ととらえ、従業員の家族を視野に入れた経営者は中小零細企業の経営者の方に多いのではないか。自らがオーナーであったり、株式の大半を自ら保有した同族企業だったりするためだ。
政府が景気の好循環に取り組む中で、特に取り組まなければならない課題は非正規雇用から正規雇用への転換促進政策と非正規雇用の正規雇用との均等待遇、あわせて、正社員の求人倍率をあげるための政策だ。特に若年層(15歳から24歳)の失業状況の改善が急がれる。
総務省調査では6月の完全失業率(季節調整値)は3.7%と前月より0.2ポイント悪化した。完全失業者数は244万人で、前月より11万人増加していた。これは勤労者の実質所得が低下し、2人以上世帯の所得も実質低下を続けていることを考えると若干の景気好転から新たに職を求める女性が増えたことなどの背景が考えられる。
ただ深刻なのは若年層の失業率が7.2%になっていること。若年層の男性では8.6%と前月より1.1ポイント悪化した。若年層が正規雇用で働ける環境づくりは急務だ。就職をあきらめた潜在失業者もいる。若年層の失業は国力の視点からも政労使協力して真剣に考えなければならない緊急課題といえよう。(編集担当:森高龍二)