オープンデータが企業を1年で10倍に成長させる? 

2014年7月27日 16:28

 オープンデータを二次利用して作られたスマートフォン等のアプリが災害対策や防犯、サービスなどで広く役立っている。福井県鯖江市では「データシティ鯖江」として率先して市のデータ公開を進めており、市内に設置されている公共トイレ情報を一目で把握できる地図や、災害時に避難所までルートを確認できるアプリなどが作成されている。

 オープンデータとは機械判読に適したデータで、コンピュータ処理が簡単に行え、著作権などに規制されることなく二次利用が可能なものをいう。国や自治体で保管されている公共データを公開して再利用を進めることで、経済の活性化や安全対策にも役立っている。政府内でも、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)を設置し、2012年7月には電子行政オープンデータ戦略がまとめられ、政府自ら積極的に公共データのオープン化推進を呼び掛けている。東日本大震災の際には避難所情報や震災関連の情報を提供しようにも、機械判読できないPDFなどのデータで保存されていたため、情報処理に時間がかかり緊急対応に遅れが出るという不備が指摘された。こういった背景を踏まえ、オープンに利用できるRDFやXMLなどのフォーマットでデータ公開を促進し、二次利用への利便性を高めてきた。

 海外ではイギリスやカナダ、オランダなどで早くからオープンデータの活用が進んでいる。06年に設立されたアメリカの企業The Climate Corporationは公共の気象データを用いて、天候や土地が作物の収穫量にどのような影響を与えているのかを分析。収穫被害発生確率を導きだし、農家などに向けた農業保険に活用している。このビジネスは過去1年で10倍にも急成長し、取扱高は3兆円にものぼっている。

 日本でも13年以降、オープンデータを活用する自治体や企業が目立ち始めている。福井県鯖江市に次ぐ形で同県坂井市がオープンデータの公開を開始し、観光や医療、福祉、防災、公共交通関連のデータを提供している。千葉県流山市、石川県金沢市や野々市市、群馬県前橋市など、ホームページ上で公共データをオープンデータとして掲載する自治体が続々と現れている。

 民間会社のカーリルは、オープンデータを活用して全国の図書館の蔵書や貸し出し情報などを確認できるアプリを作成した。これからさらにオープンデータを活用する企業が増え、利用者のニーズに沿った利便性の高いツールが増えるかもしれない。(編集担当:久保田雄城)

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