水素が無ければ走れない! 走り出した水素ステーション事業
2014年7月26日 18:07
トヨタ自動車<7203>は6月25日、燃料電池車(FCV)を2014年度内に日本国内で発売すると発表した。水素を燃料に発電し、モーターで走るFCVは、電気自動車(EV)の一種だ。しかし、航続距離が短い、充電に時間がかかるといった、通常のEVが持つ弱点がない。トヨタの新型FCVは、水素充填時間3分、約700kmの走行が可能。FCVは走行時に二酸化炭素(CO2)の排出がなく、水しか出さない、「究極のエコカー」と言われる。
一方、FCVにも課題はある。その一つがシステムコスト。高価な白金を使うなど、燃料電池のシステムコストは高い。そして、最大の課題は水素ステーションの整備だ。水素ステーションがなければFCVは普及しない。13年度から3年にわたり100件を目標に商用水素ステーションの先行整備が、助成金交付と共に進められている。
JXホールディングス<5020>傘下のJXエネルギーは現在、東京都杉並区や横浜市など5カ所に水素ステーションを設置している。水素ステーションの運営や水素の調達・供給を手掛ける子会社を近く設立し、インフラ整備に力を入れる。当初14年度中に15カ所に増やすとしていた計画を19カ所に上方修正。15年度までに40カ所にし、その後2~3年で100カ所規模にする考えだ。
岩谷産業<8088>も兵庫県尼崎市で燃料電池車向けの商用水素ステーションを14日開設した。15年度中に計20カ所の水素ステーションを開く計画だ。東京ガス<9531>や豊田通商<8015>なども都内や愛知県に設置する方針で、実験用では大阪ガス<9532>や東邦ガス<9533>、大陽日酸<4091>、出光興産<5019>なども手掛けている。
燃料電池車の最大の問題は車両のコストでも、インフラでもなく水素そのものだと指摘する専門家もいる。水素を大量に運ぶ方法として液体水素があるが、水素が液体になる融点はマイナス260度。絶対零度であるマイナス273度まであと13度。そこまで冷却しなければ液体水素は作れないのだ。圧縮水素も膨大なエネルギーを使って数100気圧という深海潜水艇の隔壁が受けるような圧力をかけ、ローリーで空気を運ぶようなもので非効率きわまりない。
究極のエコカーは車両そのものにも莫大なコストがかかり、さらにインフラ整備にもそれ以上のコストがかかる。普及に向けて準備は進められているが、巨額の補助金なしには普及し得ない。補助金に頼る事業モデルが、果たして本当に究極のエコと言えるのだろうか。(編集担当:久保田雄城)