企業がこぞって行う「コンテスト」の意味

2014年7月26日 19:27

 世の中は今、コンテストで溢れている。一昔前まではコンテストといえば、ミス・コンテストや文芸系、美術系のコンテストくらいのものだったが、現在は多彩なコンテストが日本全国で開催されている。ある情報サイトでは、年間1500件を超えるコンテスト情報が掲載されている。もちろん、そのサイトがすべてのコンテスト情報を網羅しているはずはないので、中小のものや、企業内、業界内だけで開催されているようなビジネス系のコンテストも含めれば、その数は恐ろしく膨大なものになるだろう。

 コンテストに参加する側の目的は様々だ。賞金であったり、名誉であったり、箔をつけるためであったり、あるいは次の仕事を獲得するための足がかりであったりもするだろう。しかし、コンテストを開催する側はどうだろうか。もちろん、優秀な新人の発掘や、能力のある人のモチベーション向上には役立つだろう。でも、わざわざコンテスト形式を採用する必要があるのだろうか。とくに、企業が開催するコンテストの目的や意味は何だろう。

 たとえば、事務機器、光学機器などの製造会社であるリコーでは、同社の製品を使ったビジネスアプリケーション開発の発想と技術を競うコンテスト「RICOH & Java Developer Challenge Plus」を開催している。今年で7回目の開催となるコンテストで、過去6回では延べ156ものチームが参加しているビッグイベントだ。学生を対象としたコンテストながら、2012年度大会では「プロジェクターを使って安価にインタラクティブなデジタルサイネージを実現したシステム」がグランプリを受賞するなど、ハイレベルなものとなっている。このコンテストは俗に言うビジネスコンテストで、次世代の有能な人材の発掘はもちろん、新たなビジネスモデルの創出といった面でも、主催者側にとっては大きなメリットがあるだろう。

 また、家具・インテリアの販売を行うニトリでは、接客、レジ、売場変更作業の3部門において、作業の正確性や速さ、完成度を競い合う社内コンテストを開催している。勝ち抜いたグループは、地区ブロック大会を経て、全国大会に進出するなど、社内イベントとしてはかなり大規模なものとなっている。このコンテストは、スタッフの教育・トレーニングの一貫として実施されているものだが、社員・アルバイトの垣根なく参加を促すことで、接客の質を底上げする狙いがあるとみられる。

 同様のコンテストでは、株式会社アキュラホームが主宰する日本最大級の工務店組織ジャーブネットも、面白いコンテストに取り組んでいる。コンテストは、住宅のデザイン性を競う「第8回デザインコンテスト」と、家族のコミュニケーションや絆を深めるアイデアを集めた「第7回しあわせデザインコンテスト」、住まい手によるご入居後の暮らしの工夫を募集する「第1回住みこなしコンテスト」の3 つだ。ジャーブネットでは、本コンテストを通して優秀作品を会員工務店同士で共有し、住宅デザイン力を高めるとともに、会員工務店全体のブランド力の向上を図っている。日本全国の工務店のネットワークならではのコンテストであるとともに、コンテストという形式を採用することで、ネットワーク組織であることの優位性を上手く活かしている。

 コンテストといってもやはり、目的も意図も多種多様なようだ。中には、一般の観覧者を募ってイベント形式にしているものや、ネットなどで詳細を公開しているものも多くある。審査結果だけでなく、それまでの過程や参加者の思惑、主催者の主催意図などを知ることは、その業界の関係者ならずとも、ビジネスにも大いに役立ち、応用できるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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