文科省が「HERO」とタイアップ? ドラマに頼る道徳教育は正しいか
2014年7月23日 18:38
子どもたちが生命を大切にする心や他人を思いやる心、善悪の判断などの規範意識等の道徳性を身に付ける「道徳教育」―堅いイメージのあるこのカリキュラムをPRするため、文部科学省が今月新たなタイアップ企画を発表した。下村博文文部科学大臣が「素晴らしい」と持ち上げた協力相手、それは木村拓也さん主演のドラマ「HERO」だった。
今月8日、文部科学省は道徳教育に関する理解・普及を図るためフジテレビ放映のドラマ「HERO」とタイアップすることを発表した。「HERO」といえば、木村さん演じる型破りだが正義感の強い検事「久利生公平」の活躍を描いたドラマで、2001年にドラマ版が放映、07年には映画版も製作され、今月14日より続編のドラマの放映がはじまった人気ドラマだ。
今回、このドラマの主人公である久利生の誰に対しても公平、公正な態度で接して自らの信念に基づいて行動する姿勢などが「人としてどうあるべきか? 自分はどう生きるべきか?」という道徳教育の根源的なテーマと共通するものがあると判断されたことから文部科学省とのタイアップが実現した。今後、出演者の写真とともに「みんなで考えよう、本気で生きるってこと」などと書かれたポスター約4万部が全国の小中高校、特別支援学校などに配布され、イベントなども企画されるという。
官公庁とドラマのタイアップはこのキャンペーンが初めてではないが、「道徳教育」という重要なテーマであったことも相まって、今回のキャンペーンは注目を集めている。フジテレビの提案がそもそもの発端であったとの発表に、マスメディアが政府の道徳教育に関わることについての違和感を表明する人も出てきている。
あまり注目されてこなかった道徳教育に力を入れようとする政府の姿勢は一定の評価をすべきだ。しかし、その方法が人気ドラマに頼ることというのは少し安易ではないだろうか。道徳教育は子どもたちの規範意識を形成する上で少なからぬ影響を与えるものだ。だからこそ、どのような教育内容とするかはしっかりと考えねばならないだろう。「HERO」のポスターを4万部日本中の学校に配ることに全く意味がないとは言わない。しかし、それだけではより良い道徳教育を行うことは不可能だろう。このキャンペーンが単なる話題づくりに終わらず、より子どもたちの成長に結びつく教育を考えるきっかけとなるよう期待したい。(編集担当:久保田雄城)