アニメでバイクのマーケティング? 今注目の動画マーケティングとは
2014年7月19日 00:30
スマートフォンやタブレットの爆発的な普及によって、インターネット利用者が急激に増えている。総務省が6月27日に公開した通信利用動向調査によると、2013年末時点での我が国のインターネット利用者数は10,044万人、人口普及率は82.8パーセントとなっており、ついに一億人を突破した。
このような動きはもちろん、日本だけに限ったことではない。2013年の世界におけるインターネットの利用者数は27億4千万人と推測されており、12年からわずか1年間で2億人以上も増えているという。しかも、この動きは衰えるどころか、ますます加速しており、国連専門機関の国際電気通信連合(ITU)では、世界のインターネット利用者数は2014年末までに全人口の約4割に当たる30億人に達するとの予測を立てている。
インターネット人口の増加に伴って、広告メディアの考え方も大きく変わろうとしている。その最たるものが、動画を用いたコンテンツマーケティングだろう。
近頃、WEB上でオリジナルの動画を用いたコンテンツマーケティングが盛んに行われている。これらはテレビのコマーシャルのような商品紹介を中心としたものではなく、どちらかというと商品自体の宣伝は抑え目で、それよりも企業や商品のブランドイメージを高めるようなものが多い。また、ここ数年の傾向として、ドラマ性の高い、数分から10分前後のショートムービー形式で作られることが増えている。
動画の配信は、自社サイトに直接埋め込んだりするのではなく、YoutubeやVimeoなどの動画サイトを介して行われることが多い。これらのサービスを利用する一番の理由は、コストの安さや管理の容易さもさることながら、動画サイト自体の認知度と圧倒的なユーザー数にある。また、ソーシャルメディアとの相性も良いので拡散効果も期待できる。
WEBならば、時間や枠の制約を受けないので、ユーザーも気軽に見られるし、一度公開してしまえば、配信元が取り下げない限り、永遠に配信され続ける。これほどコストパフォーマンスに優れたマーケティングもないだろう。とはいえ、あからさまな宣伝では視聴してもらえないし、他の動画の視聴前後に挟み込むような広告映像だと、ユーザーの不快を買う恐れもある。そこで、ユーザーの興味を引くような、魅力的なショートムービーというわけだ。
このマーケティング手法は、とくに海外ブランドが意欲的に採用している。日本人に馴染みの深いものとしては、たとえばルイ・ヴィトンやコカ・コーラ、レゴなどがある。また、世界最大級の総合食品飲料企業ネスレの日本法人ネスレ日本も、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」とコラボレーションするなどして積極的に取り組んでいるほか、3M(住友スリーエム)もポストイットをテーマにした「一人全役ドラマ」なるものを配信して話題になっている。
外資系だけでなく、日本企業ももちろん、負けてはいない。
ヤマハ発動機は、同社のバイクMT09とMT07をモチーフにした、オリジナルの短編アニメーション「Master of Torque(マスター・オブ・トルク)」を、日本語版と英語版で作成し、同社のグローバルサイトとYoutubeで展開している。
同作品は、最近流行の萌え系アニメではなく、大人が楽しめるクールなアニメ作品。バイクの排気音は実際のエンジン音を録音したものを使用するなどのこだわりも随所に盛り込まれており、バイクファンの満足度も高い仕上がりとなっている。ミステリアスな展開を軸に、全4話で構成されており、その内の3話が6月までに公開されてきた。世界中のファンが完結を待ちわびていたが、いよいよこの7月18日に最終話が公開される。
ちなみに、MT09とMT07は日本市場での販売も好調で、特にコアなモーターサイクルファンからの評価が高く、若者のバイクばなれが進んでいるといわれる中にあって、年間の販売目標を予約期間中に達成するというほどの人気振りをみせている。
こうした動画を用いたコンテンツマーケティングは、これから日本でもどんどん取り入れられていくだろう。今後、どんな作品が登場するか楽しみだ。(編集担当:藤原伊織)