夏相場の「第3のシナリオ」で東証2部への市場変更株にダブルの出遅れ訂正を期待=浅妻昭治

2014年7月7日 13:08

<マーケットセンサー>

  夏相場のメーン・シナリオ、サブ・シナリオはほぼ決まりだろう。メーン・シナリオは、業績相場である。小売り株の今2月期第1四半期決算に続いて、米国でも今週から主力株の4~6月期業績の発表がスタートし、これを受けて日本でも、3月期決算会社の第1四半期業績の開示を前に、上方修正・下方修正、好不調などの業績観測がかまびすしくなり、サプライズ銘柄への買いが増勢となる相場展開である。

  サブ・シナリオは、テーマ株のローテーション相場である。新興市場のロボット関連株、LINE関連株、再生エネルギー関連株に始まって、最近ではFVC(燃料電池車)関連株、格安スマホ(SIMロック解除)関連株などに短期の値幅取りの動きが活発化し、ストップ高・ストップ安などの荒い値動きが続いているが、なおこのヒット・アンド・ウエー、早乗り・早降り競争が加速する展開である。

  夏相場の方向性が、ほぼ決まりとして、あとはハラを決めて追随するだけ、どの銘柄をセレクトするだけの問題となるが、それでもなお躊躇する投資家は少なくないはずである。主力株は、先物取引や外国人投資家の動向に振り回され、テーマ株では、売り買いのタイミングが狂いでもしようものなら、天井買いと底値売りの繰り返しの恐れが付きまとい、忙しいことこのうえないことになりかねないからだ。

  そこでメーンでもサブでもない、第3の相場シナリオを想定したい。アベノミクスの「3本の矢」ならぬ「第3の矢」のシナリオである。注目するのは、東証2部銘柄である。東証2部総合指数の昨年大納会からの投資パフォマンスは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、東証マザーズ指数を上回り、日経ジャスダック指数にわずかに及ばないだけの上昇を続けている。投資家のニーズが高いことを反映しているとみて間違いない。しかも投資バリューからみても、PER、PBR、配当利回りのどの尺度でも最も割安な出遅れ市場という好ポジションにある。夏相場で期待されたメーン・シナリオもサブ・シナリオも空振りとなって夏枯れ相場となったケースでは、案外、この出遅れ市場が注目されることになるかもしれないのである。

  では東証2部株のどの銘柄に絞って夏相場を期待するか?このところ2部市場では、低位値ごろ株の存在感が日増しに高まっている。2ケタ株が3ケタ株へ、100円台の銘柄が200円台の大きく株価位置を変更するなど目立っており、これはこれで狙いを定める有力候補であるかもしれない。しかしここでは、もう少し違うポイントでアプローチしてみたいのである。注目するのは市場変更株である。

  2部市場には新興市場から市場変更される銘柄が、数多くある。ところが、2部市場での売買が実際に始まった途端に、新興市場で輝きを放っていた市場変更株が、急にくすんで存在感を喪失してしまうケースが跡を絶たない。これは、例えば今年4月に東証マザーズから、2部市場を素通りして東証1部に市場変更されたコロプラ <3668> と、東証2部への市場変更株を比べると差が歴然とする。同社は、市場変更に際して新株式発行(発行価格2572円)を実施したにもかかわらず、このとき急落した安値1964円から3025円まで5割高し、人気株の一角を占めているのである。これに対して東証2部への市場変更株の変更人気は限定的にとどまり、東証2部市場が、まさに「中二階市場」として地味な市場であることの割を食っているのである。

  これは市場変更株が、1部市場株や新興市場株に出遅れている2部銘柄のなかでもより出遅れている有力な傍証であることを意味している。いずれこの2部への市場変更株も、東証2部を通過市場に最終ゴールの東証1部に指定替えされる日を迎えるはずだ。そこまでを視野に置いて、今年1月以来、2部に市場変更された銘柄にダブルの出遅れ訂正効果を期待して狙いを定めたい。そのなかでもアプローチしたいのが、とくに出遅れが目立つ業績が好調な9銘柄である。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

【関連記事・情報】
【木村隆のマーケット&銘柄観察】地盤ネットは地盤調査へのニーズの高まりを背景に成長を持続(2014/05/30)
【高見沢健のマーケット&銘柄ウォッチ】三井物産の新中期経営計画に注目(2014/06/03)
【木村隆のマーケット&銘柄観察】モバイルクリエイトは大型案件を獲得し、好業績を継続(2014/05/29)
【今日の言葉】政治の世界もM&A(2014/05/29)

関連記事

最新記事