京大、細胞移植による糖尿病治療実現へ向けて大きく前進
2014年6月24日 10:35
京都大学の岩田博夫教授らによる研究グループは、マウスへの細胞移植で100日を超える期間にわたって血糖値が正常化し、糖尿病を治療することに成功したと発表した。
現在、糖尿病患者は人工透析を受ける必要があり、費用的にも身体的も大きな負担となっている。そこで、新しい治療方法としてインスリン分泌組織の移植が研究されてきたが、(1)移植細胞を拒絶反応や自己免疫反応から保護するため免疫抑制剤の副作用が心配、(2)移植部位が深部の重要臓器である肝臓や腎臓であるため、何か問題が起きたときにインスリン分泌組織を除去することが困難、(3)インスリン分泌細胞である膵島の提供者が少なく、治療を施せる患者数は年に4、5人に限られる、という課題があった。
今回の研究では、糖尿病のラットの皮下に、塩基性繊維芽細胞増殖因子を含むアガロースロッドを埋め込み、免疫反応の起きない免疫特定部位を作成することに成功した。また、この部位に移植したインスリン分泌組織によって血糖値が正常化することが確認できた。
今回の手法では、(1)の課題については、免疫抑制剤の投与は必要なく、(2)については、皮下への移植であるのでもしもの時は容易に取り除くことが出来る。また、(3)についても、ヒトiPS細胞から高効率で分化誘導が可能に成りつつあり、この1、2年の間に大量の膵島を確保できる技術が確立できる見通しとなっており、研究グループは、「理想の治療法が確立できたと考える」としている。
岩田教授は、「再生医療は高額の医療費がかかり、医療として定着するか危ぶむ声があります。しかし、一人当たり年間約500万円の医療費がかかる透析患者を減らすことができれば、当初1000万円かかったとしても十分医療費を削減でき、何よりも患者は極めて快適な生活が送れるようになると考えます」とコメントしている。
なお、この内容は、「American Journal of Transplantation」誌の電子版に掲載された。