ついに政府専用機も 加熱する航空機受注競争

2014年6月15日 22:15

 4月の旅行収支が大阪万博以来、44年ぶりに黒字になった。さらに国土交通省の有識者会議は羽田、成田両空港の発着枠拡大案により、2020年の東京五輪を前に発着枠を1割程度増やし、国際化を一段と進める方針を示した。航空機需要の増加が見込まれるとともに、航空産業は空前の受注競争に突入した。

 2013年10月、航空業界を驚かすニュースが伝わった。日本航空<9201>が欧州の航空機大手エアバスから初めて旅客機を調達すると発表したのだ。日航が購入するのは新型の大型旅客機A350。現行の大型機ボーイング777の後継として、A350を国内線だけでなく国際線にも投入する考えだ。パイロット訓練用のシミュレーション設備も合わせて、30~40機購入するとみられる。機体の価格は1機200億円程度で、単純に計算すると6000億円規模の大型投資となる見通しだ。

 現在、日航の主要機材はすべてがボーイング製。旧日本エアシステム時代を除けば、日航としてエアバス機を購入するのは初めてのことであり、ボーイング独占の牙城が崩れ去ったことになる。もともと日航はボーング747(ジャンボ)を世界最多で保有していた時期があるなど、機材調達でボーイング社への依存度が高かった。

 背景には1980年代の日米貿易摩擦など日米関係への配慮で、米国製航空機への依存を強めざるを得ない事情があったとみられる。ANA<9202>もエアバス機は13年6月末時点でリースを含み23機しか保有していない。エアバス機の日本国内シェアは現在1割程度にとどまっている。

 こうした受注競争にさらに拍車をかけたのが、ANAが14年3月に行った航空機70機というまとめ買いだ。定価だと購入額は約1兆7000億円と、同社としては発注機数、金額とも過去最大となる。前年、日航からの大型受注をエアバスに奪われたボーイングは必死の巻き返しを展開。70機の内訳はボーイングが40機、エアバスが30機。両社が受注を争っていた次世代の大型機は、ボーイング777-9Xが選ばれた。近・中距離機はエアバスからA321neoなどを計30機調達する。両社をぎりぎりまで競わせることでより有利な条件を引き出す狙いもあったようだ。

 両社の受注争奪戦は、ついに政府専用機にまでもエスカレートしている。現行機は93年、宮沢政権の渡辺美智雄副総理・外相の訪米でデビューした。政府は整備を担う日本航空との契約が18年度に切れることから、19年度から後継機を導入する。ボーイングが提案するのは大型旅客機777-300。エアバスは最新型機A350-900。この受注競争を制するのはボーイングか、それともエアバスか。両者の航空機受注競争から目が離せない。(編集担当:久保田雄城)

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