【経済分析】エルニーニョが暗示する米国の景気後退(上)

2014年6月8日 17:38

【6月8日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

前回のブログ記事(「【経済分析】どうすれば経済を予測できるのか(上)」「【経済分析】どうすれば経済を予測できるのか(下)」)でも述べたように、経済を予測するとは経済の中に存在している秩序(法則)を見出すことであると私は考えています。

たとえば、「ハレー彗星が〇〇年△月××日〇時×分に地球の上から見える」という予測は、ニュートンの「運動の法則」に従って天体が運行しているからです。天体の運行を司っている法則(秩序)を発見することができたからこそ、何十年後、何百年後の天体の位置を正確に予測することが可能となるわけです。

経済も全く同じであり、なぜ経済予測が可能になるのかといえば、経済が一定の秩序(法則)に従って動いているからであり、その秩序(法則)を見出すことができなければ経済は予測できないと私は考えています。

ここで特にお伝えしたいことは、経済に働いている秩序は一つではなく、視点を変えて眺めることにより経済の中に複数の秩序を見出すことができる、ということです。

戦前と戦後の経済にみられる70年周期の循環は、戦前・戦後を通した100年以上に及ぶ日本経済の歴史を見渡した時に発見できる「時間的な秩序」でした。

一方、視点を人間の経済活動から‘自然’も含めた地球全体に広げると、経済の循環と気象の循環が連動しているという「空間的な秩序」を見出すことができます。さらに、連動の仕方にも、両者の先行・遅行関係が10年周期で入れ替わるという規則性がみられます。

このグラフは、南米ペルー沖のエルニーニョ監視海域の海面水温平年差と米国のISM非製造業景況指数の中の新規受注の推移を重ねたものです。2009年までは新規受注が先行し海面水温が遅れて動いていましたが、2010年以降はその関係が逆転して、海面水温が新規受注に先行していることがわかります。

4日に発表された5月のISM非製造業景況指数の新規受注は前月から2.3ポイント上昇の60.5と昨年12月の50.4を底に5ヵ月連続で改善し、2011年1月以来となる60台を回復しました。また、6日に発表された5月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比21万7千人の増加と4ヵ月連続で20万人を上回りました。これらの堅調な景気指標を受けて先行きも景気回復が続くとの期待から、先週のNYダウは3営業日続伸し、連日で過去最高値を更新しました。

しかし、さきほどのグラフで新規受注に先行する海面水温の動きからは、このようなマーケットの期待とは裏腹に、新規受注がおそらく5月にピークアウトして悪化に転じる可能性が高いと予想されます。さらに、今年の夏に5年ぶりにエルニーニョが発生する見込みで、今後海面水温は前回エルニーニョが発生した2009年の時のように一段と上昇する(グラフ上では逆目盛りとなっているので一段と低下する)とみられることから、新規受注はさらに低下して50を割り込み、米景気がリセッションに入る可能性も予想されます。

 5年ぶりに発生するエルニーニョは、日本の景気後退のみならず米国でも2009年7月から5年続いた景気拡大が終了するサインとみることができます。

米景気に今後起こると予想されるこのような変化は、海面水温と景気の関係にこのような法則(秩序)が存在することを知らなければおそらく予測は困難であろうと思われます。この予測がはずれるとすれば、それは唯一、2012年の時のようにエルニーニョが発生すると予想されていたにも拘わらず、発生に至らない場合だけだろうと私は考えています。(「【経済分析】エルニーニョが暗示する米国の景気後退(下)」に続く)【続】

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