九大、iPS細胞生成時のテロメラーゼ逆転写酵素のはたらきを解明
2014年6月7日 22:33
九州大学の永松剛助教らによる研究グループは、iPS細胞を生成する際のテロメラーゼ逆転写酵素のはたらきを明らかにした。
iPS細胞は、多能性を持つようになる過程で細胞分裂をおこなうことが知られているが、細胞が分裂によって増殖することは、DNAダメージや染色体異常といった危険を伴うため、そのメカニズム解明や予防策が求められていた。
今回の研究では、染色体が細胞分裂を繰り返す度に末端が短くなるのを修復・保護するメラーゼ逆転写酵素(TERT)に注目し、そのはたらきを調べた。まず遺伝子操作によってTERTを欠損させたマウスを用意し、このマウスからiPS細胞を生成した。
すると、生成の効率が著しく減少したが、iPS細胞は誘導され、三胚葉への分化能も持ち合わせていた。このことから、TERTは体細胞の多能性獲得に寄与するもののその働きは必須ではないことが明らかになった。
一方、生成されたiPS細胞自体を細胞を増殖させていったところ、染色体異常が起きていることが認められた。このことは、増殖に伴う染色体末端修飾や保護といった、これまでによく知られているTERTの機能とよく一致するものと考えられる。
今回得られた結果は、TERT欠損細胞でも効率よくiPS細胞を樹立する方法や、TERTを欠損したiPS細胞でも染色体異常が起こらないように培養する方法を確立することにつながる可能性を持っている。将来的な再生医療の実現にとって重要な手法確立の基礎となる成果と考えられる。
なお、この内容は米国科学雑誌「The Jounal of Biological Chemistry」に掲載された。